寸劇シリーズ 3 ご近所の医者と患者

3 ご近所の医者と患者

 

医者・ おや 中村さん 回覧板を抱えてどうなさいました?

患者・ そうそう 先ずはこの回覧板をお渡ししますが どうもこの2~3日熱っぽくてコロナじゃないかと心配になりまして ちょっと診てもらえませんかね

医者・ そうですか でも中村さんは毎年ポックリ寺にお参りしてるからコロナでコロッとあの世に行けたら願い通りで万々歳じゃないですか 『ポックリ』も『コロッ』も同じ様なもんですよ

患者・ ちょっと先生 無責任なこと言わないで下さいよ ピンピンコロリは高齢者の誰もが願うことですが それにも本音と立前があるんですよ

医者・ ほ~う それでは中村さんはポックリ寺でどんなことをお願いしてるんですか?

患者・ 白寿までお迎えに来ませんようにとお願いしてるんです

医者・ 白寿といったら99歳ですよ それまでポックリさんは覚えていられますかね 間違って早めにひょっこり現れたらどうします?

患者・ だから間違わないように毎年お参りして『まだですよ』『まだですよ』と念を押しているんですよ

医者・ やれやれポックリさんも大変だな~ 大勢の人の願い事を完璧に管理するのは大変だから国が勧めるデジタル化に参加してオンライン化する必要がありますね

患者・ 先生 ポックリさんの心配より私の心配をして下さいよ 早く診察してくれませんか

医者・ ああ コロナの件ですね それで中村さんは自分で体温を測ってみましたか?

患者・ この手のひらをおでこに当ててみたら37、2度もあるんですよ それで心配になって・・・

医者・ 随分正確な手のひらの体温計ですがもっと正確なこの測定器で測ってみましょう

患者・ 何ですか ピストルみたいなものを私に向けて 先生はポックリさんの必殺の下請け仕事もやってるんですか

医者・ これは最新の測定器でして こうして顔に向けるだけで体温を測ることが出来るんですよ はい OKですよ

患者・ どうです? 37、2度あるでしょう

医者・ ゲゲゲッ これは驚いた 大変だ~~

患者・ な・何が大変なんですか 先生 はっきり教えて下さい 

医者・ ポックリさんが中村さんの頭上で叫んでいますよ『もうお前は死んでいる』と

患者・ どひゃ~~~ッ ひでぶ~~~

おわり