お爺ちゃんの昔話シリーズ 8

てんやわんや

◎ 連休の最後に突然娘が孫を3人も連れて遊びに来たので昨日はてんやわんやの大騒ぎでお爺ちゃんもお婆ちゃんもへとへとに疲れたよ

▲ 僕は一緒に遊んだからとても楽しかったけど「てんやわんや」ってどういうこと?

◎ 昔々 おだんご村にテンヤさんとワンヤさんという外国の人がやって来たそうじゃ  村人は初めは警戒してたけど二人ともとてもまじめに働くので安心したけどいつも二人一緒に行動するのできっと日本人の友達も無く離れ離れになった家族の事を思い出してホームシックになっているに違いないと思ったんだね

▲ ふ~~ん テンヤさんとワンヤさんは兄弟なの?

◎ 違うよ 仲の良い男友達だよ やがておだんご村に春がやって来てお花見のシーズンになり村人はそれぞれおにぎりやおだんご等を持って神社の回りの桜の木の下に集まってお花見をするのが習わしだったんだね

▲ 持って行くのはおにぎりやお団子だけでなくお酒もでしょ

◎ ハハハハ 翔太ちゃん ピンポ~~ン ピンポ~~ン だよ 男の大人はこういう時は多少飲み過ぎても奥さんから文句を言われないので心うきうきで桜の花なんか見ないで楽しい話をツマミにしてほろ酔い気分になるんだね この気分は翔太ちゃんが大人に成ったらきっと分かると思うよ ウッシッシ 

▲ お爺ちゃん変ね笑い方するね

◎ ハッハッハッ 大人になると色々な笑い方が出来るんだよ ウッシッシだけじゃないよ ガハハ ヒッヒッヒッ ワッハッハ カンラカラカラ とかね

▲ あんまりいい笑い方じゃないみたい

◎ でもさ 「はひふへほ」は全部笑い声になるんだよ 翔太ちゃんもこれから色々な笑い方を覚えると思うよ さて? 何の話しをしてたっけ? 八百屋さんと魚屋さんの話だったかな

▲ 違うよ テンヤさんとワンヤさんの話だよ

◎ おう そうだったな 「知っていながら知らないそぶり」 これも大人の粋なジョークなんだよね 翔太ちゃんも大人になったら分かると思うよ さて 八百屋さんと魚屋さんの話を続けるとするか

▲ お爺ちゃん 八百屋さんと魚屋さんじゃなくて テンヤさんとワンヤさんの話だよ 最近のお爺ちゃんの昔話はお母さんの電話みたいに中々終わらなくなったね

◎ ウグ~~ 翔太ちゃんね お母さんの長電話は世間話といってどうでもいい話をぐだぐだと故障した蛇口の様に締まりのない会話をタラタラとすることだけどお爺ちゃんの昔話は日本の神話と並ぶ国宝級の話なんだよ 翔太ちゃんが大人ならネクタイをして正座して聞く程のゴージャスなお話なんだよ

▲ ゴージャスって何のこと?

◎ それを説明してると益々お母さんの長電話より話が長くなるのでテンヤさんとワンヤさんの話を続けることにしよう だんご村のお花見は3日間続けて行われるんだけど3日目の昼過ぎに村長さんの提案でテンヤさんとワンヤさんを花見に招待することに成ったんだね

▲ へ~~ それでテンヤさんとワンヤさんは花見に来たの?

◎ 二人は恐る恐る顔お出して初めはもじもじとおとなしく座っていたけど頂いたお菓子やおにぎりを食べ村人の優しい笑顔に打ち解けて片言の日本語で会話も弾み更にお酒を飲んだら急にテンションが弾けてテンヤさんが立ち上がって自分の国の歌を歌い始めワンヤさんは負けじと踊り出したんだよ

▲ へ~~ 楽しそう 

◎ テンヤさんの歌は ニワトリが石につまずいて転がったようなにぎやかな調子で「コケーコケーコロリン コンコロリン・バタバタコロリン コンコロリン」と繰り返し歌うので子供たちが面白がって真似をして歌い出し ワンヤさんの操り人形が手足をばたばたさせて踊ってるような踊りもまねてお祭り騒ぎとなったそうだ

▲ へ~~ 僕も其処に居たら歌って踊って大騒ぎしただろうな

◎ 子供だけじゃ無いんだよ テンヤさんとワンヤさんは座って眺めていた大人の手を次々に引っ張って踊りに参加させたんだね お爺ちゃんもお婆ちゃんも踊り出し通りかかった人も踊り出し 何事が起ったのかと駆けつけたお役人さんも刀を振り回して踊り出したため犬は吠え出し猫はぎっくり腰でむしろを引っ掻くし花見ではなく桜の花の方がそんな人間を眺めて楽しんだそうだ そんなことが有ってから村人はドタバタ騒ぎのような状態をテンヤさんが歌いとワンヤさんが踊ってるようだと言うようになりやがて「てんやわんや」と言うようになったそうじゃ おわり 

▲ ふ~~ん お爺ちゃんさ てんやわんやとしっちゃかめっちゃかとドタバタとお祭り騒ぎの違いを教えてくれないかな

◎ う~~ん それはお母さんに寝ながら聞きなさい 一日じゃ終わらないからね

▲ うまく逃げたね お爺ちゃん

◎ 沈黙は金なり・・・これで今日の昔話は終わりだよ さらばじゃ翔太ちゃん

 

おわり