白髪の王子様の会話ドラマ  必殺ポックリ寺  ③ピンピンコロリ

ピンピンコロリ
◎おや 冨長さん おめでとうございます まだ生きてたんですか
●住職 正月早々の挨拶が『まだ生きてたんですか』はないでしょう
◎でも昨年早く死にたいとの相談を受けて苦しまないでポックリ逝く方法を伝授した筈ですが・・・
●それなんですよ住職 教わった通り風呂の浴槽に入る前に冷水を頭から被り40度以上の熱い湯船に飛び込んでも全然ポックリ逝かないんですよ それどころか一週間同じことを続けたら持病の腰痛も痛風も無く成りピンピン元気に成っちゃったじゃありませんか どうしてくれるんですか
◎ピンピン元気に成りましたか それなら予定どうりですよ 冨長さんはピンピンコロリを希望されましたが腰痛やら痛風等で病弱だったので先ずは体をピンピンにすることから始めた訳です 体がピンピンに成ったらコロリは簡単です 明日にでもコロリと逝きましょうよ冨長さん
●いやいや住職 私は病を苦にして死にたいとお願いした訳でして体がピンピンに成ったらポックリ逝く必要はないんですよ コロリは無かったことにしてくれませんか
◎そんな・・・今月は冨長さんの葬儀代が私の生活費の予算に組み込まれているのに困りますよ
●ハッハッハッ そんなことより住職 あなたがちょくちょく通ってるキャバクラってやつに私も連れてってくれませんか あの世の天国に逝く前に地上の天国に行ってみたいんですよ
◎何で私がキャバクラに通ってることを知ってるんですかね 私がキャバクラに通ってるのは修行のためです 誤解しないで頂きたい
●ほほ〜う どんな修行かお聞かせ頂けませんかの〜
与謝野晶子の短歌に心打たれましてな
『柔肌の熱き血潮に触れもみで寂しからずや道を説く君』という歌ですが聞いたことありませんか
●どんな内容でしたっけ
◎『私のあなたに対する熱い心を理解できないのにどうして私に人の道を説くことができるんですか 道を説く前に私の帯を解いておくれやす』という意味ですな 私も人の道を説く身ですから女心を理解するために通っているという訳であります
◎成程 私もその熱き心に触れてみたいもんですな そこでポックリ逝くなら本望ですよ そしたら住職私をお墓までおんぶして埋めてくれませんか おんぶ代を追加計上しておきますから
◎分かりましたお任せ下さい その代りキャバクラ紹介料として本堂の前の賽銭箱に10万程入れて下さい
●ちょっと〜 それはボッタクリじゃないですか住職
◎お正月相場です なんたって熱き血潮に触れるんですよ冨長さん
●う〜〜〜〜〜ん う〜〜〜〜〜ん
                 おわり