4字熟語シリーズ 9 順風満帆

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9 順風満帆

❤ 絶望君お早う

◎ お~う! その絶望君と呼ぶのは止めてくれと言ってるじゃないか

❤ だって何時もビルの屋上から飛び降りそうな顔して歩いてるから心配で目が離せないんだもの

◎ 目が離せないと言うけどお前と会うのは3ケ月振りだぜ 随分と目を離しっぱなしじゃないか

❤ あらっ 寂しかったの私と逢えなくて 沈んだ顔の原因は私だったんだ 御免ね 三ケ月もほったらかして

◎ お前はいいよな~ 何時もお気楽で 俺は温暖化の事 新型コロナウイルスの事 経済の事 高齢化社会の事とか考える事が山ほど有るんだよ それに対して何もできない自分が情けなくてさ~~ お前は何か悩みは無いのかね

❤ 悩みか~~ 2・3日考えれば有るかも知れないわ

◎ いいよ 無理して考えなくても 順風満帆気分で暮らせるなんて羨ましいよ

❤ その言葉でいい事思いついたわ たった今から絶望君を改め順風君と呼ぶことにするわ そして私が満帆ちゃん 二人合わせて順風満帆なんて縁起がいいし恰好いいじゃない いいでしょ順風君

◎ まあ絶望君より順風君のがいいけど別にニックネームなんかいらないよ 佐藤君でいいよ

❤ 何言ってるのよ 街中で(佐藤君~~)と大声で呼んだら百人位は振り向くと思うわ その位多い名前だからニックネームは必要なのよ 順風君ならそんな心配もいらないし最高だわ 順風君 順風君 順風君 順風君 順風君 君はもう順風君なのだ~~

◎ どうせ俺とお前だけのニックネームなら構わないけどさ 幼馴染だし

❤ よし 決定~~ ところで順風君 満帆ちゃんは今日とってもラッキーな事があったんだよ

◎ なに?

❤ 喉が渇いたので駅前の自販機でコーラでも飲もうとポケットから小銭を出そうとしたら五百円玉を落としてしまったのよ

◎ ちっともラッキーじゃないじゃん

❤ 話の先を聞きなさいよ その五百円玉がコロコロ転がって自販機の下に入っちゃったのよ

◎ 益々ラッキーじゃないじゃん

❤ だから話は未だ続くのよ そこで諦めずに自販機の下を手でまさぐったら百円玉が二枚も出て来たのよ ラッキーでしょ

◎ それで落とした五百円玉は?

❤ 出て来なかったわ ハハハハ

◎ ハハハハじゃないだろ 五百円落として二百円拾って何がラッキーなんだよ 小学生だって三百円の損だと分かるぜ

❤ あのね 幸せな気分って足し算や引き算で計算するもんじゃないのよ 五百円玉を落とした時はもう駄目かと諦めかけたけど諦めずに探したら百円玉が二枚も出て来たのよ 何事も直ぐに諦めてはいけないとの神様のお告げだったのよきっと 残りの三百円はそれを教えてくれた神様へのチップだと思えばリッチな気分に成れるでしょ それに後で私の落とした五百円玉を拾った人もラッキーな気分に成ると思うのよ そんなラッキーな気分が広まれば自販機から世界平和に繋がると思うのよ 私ノーベル平和賞貰えるかもよ

◎ 俺がオツムカラッポ賞をあげるよ お前が何時も順風満帆気分でいられる理由が分かったよ

❤ 順風君は私の事を(お前・お前)と呼んでるけど今も亭主気分でそう呼んでるの?

◎ 今もって幼馴染でずっと前からそう呼んでるじゃないか

❤ 違うわよ 幼稚園の頃 おまま事で夫婦ごっこをしたでしょ その時順風君は私の事を(お前)と呼び 私は順風君の事を(あなた)と呼んだのよ それからよ順風君が私のことをお前と呼ぶようになったのは

◎ そうだったかな 忘れたよ俺

❤ 男って薄情なんだから 順風君は私よりお気楽なのよ

◎ そんな昔のこと良く覚えてるよな~~

❤ だから順風君が私のことをお前と呼ぶことは今も私の亭主気分でいるってことなのよ それで私が(あなた)と呼んだら一件落着で明日から一緒に暮らすことになるのよ 分かってる?

◎ ちょっ ちょっ ちょっと待ってよ いまの(お前)は取り消すよ 前向きに善処するってことでどうかね

❤ ハハハハ そんなに固くならなくてもいいわよ 幼馴染で一緒にお風呂に入った事もあるんだから とりあえず明日暇だから順風君のアパートに行って下着でも洗濯してあげるわ どうせ汚れたまま洗濯機に放り込んであるんでしょ

◎ いいよ そんな

❤ 私は順風君のパンツを割りばしで摘まんだりしないわよ 頬摺りして洗濯してあげるわ

◎ いいよ いいよそんな 自分で頬摺りするからいいよ

❤ 遠慮しなくていいわよ 幼馴染なんだから 尽くす喜びは順風満帆の条件の一つなのよあなた あっ! あなたって言っちゃった これで二人は結ばれたのね そうでしょあなた

◎ ゾ~~ッ お前は順風満帆かもしれないけど俺は波乱万丈な予感がしてきたよ ゾ~~ッ

  おわり