会話のボクシングシリーズ 24 三羽アホウ鳥

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24 三羽アホウ鳥

次長) それじゃ私は家が遠いので先に帰りますよ

幹事) お疲れ様でした 会費の半分の元も取らないでお帰りになるのにカンパのプラスアルファーまで頂きまして申し訳ありません

次長) ハハハ それじゃ元の取れなかった分の料理を後で宅急便で家に送ってくれないか クール宅急便じゃなくてホット宅急便で頼むよ

幹事) それは無理ですよ 次長宅の前の狭い道を走ってるのは馬と飛脚だけだとさっきおっしゃってたじゃないですか そんな狭い道には宅急便の車は入れませんよ

次長) ハハハ 冗談も考えて言わないと損をするなハハハ 皆さんお先に 楽しく歓談してくださいよ 『次長 金を残して 留守がいい』なんて私を酒の摘まみにしないように頼みますよ それでは失礼

全員) お疲れ様でした~~

・・・・・・・・

幹事) この送別会は次長が発起人なんだぜ

弘美) 私達三人が新入社員の研修も終わり来月からバラバラに配属されるのを知って企画してくれたのね 次長も優しいけど私達が美人だからよ 美人は得するわね由香 そうでしょ真穂 

ハハハハ ハハハハ ハハハハ

幹事) 三羽カラスが良く言うよ

弘美) でも次長は毎日遠くから通勤して大変よね

幹事) それも後2か月ちょっとで終わりだ 3月いっぱいで65歳の定年だからね

弘美) それにしても毎日鶴ヶ島から船で通勤でしょ あの歳まで通勤地獄に耐えてきたなんて信じられないわ

幹事) 何言ってんだよ 鶴ヶ島は埼玉県のど真ん中だぜ 海なんか背伸びしたって見えやしないさ

弘美) だってこの前コミュニケルームでコーヒーを飲んだ時次長と隣り合わせになったので鶴ヶ島ってどの辺ですかと聞いたら『君は伊豆七島鶴ヶ島を知らんのかね そこから船に乗って竹芝桟橋に着き電車に乗り換えてここまで通勤してるんだよ』と本人から聞いたんですよ

由香) ハハハ弘美は次長に騙されたのよ 伊豆七島鶴ヶ島なんて無いわよ 鶴ヶ島東武東上線で池袋で乗り換えるのよ私にはちゃんと教えてくれたわ

弘美) くやし~~ 私を騙して由香にはちゃんと教えたんだ 次長の藁人形作って五寸釘で打ち付けようかしら

由香) 物騒な事言わないでよ でも遠くて通勤が大変な事には変わりないわ これも次長から聞いたんだけど東武東上線って殆ど埼玉県の農村地帯を走ってるので通勤車両の最後尾は牛や馬や豚等を乗せる家畜専用車両になってるんですって

真穂) へ~ のどかでいいじゃない

由香) それがそうでもなさそうよ 次長が乗り遅れそうになって慌てて最後尾に飛び乗ったらその家畜車両で牛や馬に顔をペロペロ舐められて背広までよだれだらけになって困ったと話してたわ

幹事) ハハハハ弘美だけでなく由香も次長に騙されたんだよ 今時通勤車両に家畜車両が連結されてる訳ないだろが 由香は牛や馬に舐められたんじゃなくて次長に舐められたのさハハハハ

由香) うっそ~~ く~~~っ 私も藁人形作ってやる~~

幹事) 三羽カラスの内二羽は次長に騙されたけど真穂はどうなんだ 心当たりはないのか?

真穂)  若しかして あれも嘘なのかしら

幹事) あれって何だよ 言ってみろよ

真穂) 次長が子供の頃よく坂本竜馬とキャッチボールをして遊んだと言ってました 若しそれが嘘だったらショックだわ 私信じてたのに

幹事) バッカかお前は 時代錯誤も甚だしいじゃないか そのくらい冗談だと分からないのかよ 

真穂) う~~っ 私も藁人形作ってやる~~ 

幹事) 次長はお前達に嘘をついたんじゃなくて軽い冗談のつもりで言ったのにお前ら三羽アホウ鳥が冗談とは気付かないで真面に信じたからこういうことに成ったんじゃないか お前らはもう直ぐ社会人二年生だぞ 四月には後輩も入社して来るんだ もう少し常識を身に着けるんだな 次長は憎まれるのを承知で社会の荒波のジャブをお前らにプレゼントしたんだろうよ

真穂) それでも嘘はいけないわ 次長が退職する前にこの敵は取ってやるわ

由香) そうよね 次長のお茶に雑巾のしぼり汁を入れてやろうかしら

弘美) それじゃ私はコーヒーにトイレに置いてある雑巾をしぼってやるわ

幹事) おいおい 意地悪はもうベテラン社員並みじゃないか たった一年でお局さんにスピード出世かよ 三羽お局さんは勘弁してほしいよな~~ 南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏

チ~~ン

 

おわり