会話のボクシングシリーズ 17 赤い自転車

17 赤い自転車

▲ あら田中さん 大丈夫ですか どこで転んだんですか 自転車が血だらけじゃないですか

◎ いえいえ これは血じゃなくて昨日赤ペンキを塗ったんですよ 何処に置いても自分の自転車が見つけやすいようにと思いましてね グットアイディアだと思いませんか

▲ 驚かせないで下さいな そういうのって脳天気アイディアと言うざーますのことよ 爺さんがお猿のお尻みたいな真っ赤な自転車を乗り回したら時節柄サンタさんの偽物ドロか郵便配達を装ったドロ爺だと思われますのことよ お気を付けあそばせ あらいけない 先を急ぎますので それじゃ失礼あそばせ ホホホホ ホッ

◎ 悪口婆婆あのこんこんちきめ 自分の言いたいことだけペラペラしゃべりやがって『それじゃ失礼あそばせ』だと 尾びれのホホホを含めて本当に失礼な奴だよ全く おっといけない 怒らない怒らない 年を取ると短期に成るというからな

さて気を取り直して出発進行~~

◆ おじさん こんにちわ

◎ おう 隣の優紀君じゃないか もう学校終わったのかい

◆ うん 明日から冬休みで学校に行かなくていいんだ だけどおじさんのような定年じゃないよ

◎ ハッハッハッ そりゃそうだ 小学校卒業で定年に成ったら年金貰えないよ

◆ でももう直ぐクリスマスのプレゼントが貰えるしお正月にはお年玉が貰えるからそれでいいよ

◎ そうか 冬休みは沢山のプレゼントが待ってるから楽しみだね

◆ おじさん その赤い自転車還暦祝いのプレゼントなの?

◎ そうじゃないよ どこに置いても目立つように赤ペンキを塗ったんだよ グットアイディアだろ

◆ うん いいアイディアだね

◎ やっぱり若者には俺のセンスを理解できる柔軟な思考ができるんだな 嬉しいね 悪口婆婆あめ どんなもんだい

◆ おじさん それだけ目立てば 少しぐらいボケても大丈夫だね 良かった良かった それじゃおじさん迷子にならないでね バイバイ

◎ バ・バ・バカ言ってんじゃないよ 6年生にもなると生意気に大人に意見を言うから可愛くないんだよな 子供のくせにご近所の家庭を覗くのが趣味らしいからきっとろくな大人にならないな ・ おっと短期は損気ときたもんだ 近隣に恵まれなくても自分が心豊かであればそれでいいさ もう一度気を取り直して出発進行~~

警・ ちょっと失礼

◎ おや お巡りさん 何か御用で

警・ 失礼ですがその赤い自転車はご主人の自転車ですか?

◎ ええそうですが

警・ 奥さんとか娘さんの自転車では?

◎ いいえ 私のマイチャリですよ 

警・う~~ん・・・・・ご主人が赤いマイチャリね~~~

◎ 何ですかその疑った目つきは 定年の親父が赤い自転車に乗ったらいけないんですか 赤いポストに近づいちゃいけないんですか 真っ赤な夕焼けを見たら逮捕されるんですか お巡りさん答えてくださいよ どうなんですか

◎ そんなに赤い顔して怒らないで下さい たまたま赤い盗難自転車を探していたもんですから

◎ 定年になった親父が赤い顔しちゃいかんのかね 一年中キュウリみたいな青白い顔をしてろというのかねお巡りさん これでも昔は赤いフンドシをキリリと締めて海や川を魚と争って泳いだもんだよ 貴方も男なら勝負パンツは赤じゃないのかね そうでしょ

警・ いえいえ私はピンクです そんなことはどうでもいいのです ご主人 今日は何曜日だか分かりますか?

◎ 日曜日だよ

警・ やっぱり

◎ 何がやっぱりですか

警・ ご主人 今日は一週間のど真ん中の水曜日なんですよ

◎ そんなこと関係あるか 私は定年で毎日が日曜日なんだよ 文句あるかね カレンダーを見てみなよ 日曜日は赤なんだよ 還暦過ぎると赤ちゃんに返るんだよ 赤ちゃんなら赤い自転車乗っても可笑しくないだろうが

警・随分ひねた赤ちゃんでちゅね お邪魔しまちゅた どうぞ行ってらっちゃいまちえ 

◎ 日本の警察大丈夫かな

おわり