寸劇シリーズ 6 年末のプレゼント

6 年末のプレゼント

田中・ クリスマスが終わると直ぐにお正月で何だか気持ちだけがそわそわして落ち着かないよな

佐藤・ 爺ちゃん婆ちゃんの子供のころはクリスマスの行事なんか無かったらしくて11月位から『もう幾つ寝るとお正月』の歌をうたいながら指折り数えてお正月を楽しみにしていたらしいよ

田中・ クリスマスも初めは幼い子供達の夢の世界だったのに大人達、特にアーメンをラーメンと間違える若者達に乗っ取られた感じだよな

佐藤・ ほんと ほんと 渋谷のハロウィンのバカ騒ぎなんか子供達からも馬鹿にされてるしな バレンタインやホワイトデーなんかもそうだけど商売人の広告にうまく乗せられてるのに気付くべきだよな バカ騒ぎして儲かるのは商売人だけさ 

田中・ ハハハ 社会人に成ると見る目が変わってシビアになるのかな

佐藤・ 社会人のがストレスが溜まってどんちゃん騒ぎがしたいのにさ コロナで忘年会も仲間の飲み会も中止だしモヤモヤが爆発しそうだよ

田中・ ハハハ 俺にぶつけるなよ そのモヤモヤを

佐藤・ お前にぶつけたらお前のストレスで倍返しを食らいそうだから止めとくよ

 ハハハハ ハハハハ

中村・ あらお二人さん楽しそうに何のお話してるのかしら

田中・ あっ 中村さん お疲れ様です

佐藤・ どうも・・・

中村・ 田中さん 佐藤さん 色々お世話になりました・・・

佐藤・ あれっ? 中村さん 今日で定年退職ですか?色々お世話になったなんて

中村・ 誰が定年ですか 今日が仕事納めで年末のご挨拶をしてるんですよ 私が60歳に見えますか

田中・ そうだよ佐藤 定年だなんてお局様に失礼じゃないか

中村・ ちょっと田中さん お局様って誰のことですか?

田中・ あっ! その~ あの~ お局様じゃなくてお疲れ様と言うつもりが・・・

中村・ 誤魔化しても無駄よ 私も落ちたもんだわ 持てない村の住人に定年だとかお局様なんて言われて

佐藤・ ちょっと中村さん 我々二人が持てない村の住人だと言うんですか

中村・ そうよ イブの日に他の若い人達がいそいそと帰るのにあなた達二人は遅くまでコミュニケ室でコーヒーを飲みながらだべっていたじゃない 彼女がいない証拠でしょ

田中・ クリスマスは子供達のイベントですよ キリスト教でもない大人がウキウキするなんてそっちのがおかしいですよ

中村・ 時代遅れな事言ってんじゃないの クリスマスは今では宗教に関係なく国民的行事なのよ 初詣だって宗教に関係なく神社仏閣にお参りするでしょ それと同じよ 君達は平成生まれなんでしょ 昭和生まれみたいなこと言ってんじゃの

佐藤・ そうですか 中村さんは明治生まれでしたね 目尻の皺に歴史を感じます

中村・ フッ フッ フッ そんなんで私を怒らせようとしても無駄よ 来年の人事異動にお二人を我が部署に来てもらうよう人事部長にお願いするわ 丁度二つの席があいているのよ 

佐藤・ ちょっと待って下さいよ

中村・ 我が部署に配属されたら丸めてこねて叩いて押しつぶしてじっくり熟成させてあげますから待っていなさい これが私からのクリスマスプレゼントよ ホッ ヒッ ヒッ それでは良いお年を

ホッ ヒッ ヒッ  ホッ ヒッ ヒッ

佐藤、田中  ぞ~~~~~っ

   おわり