白髪の王子様の会話ドラマ ③もしもざるそばを注文したのにカレーライスが出てきたら

③もしも ざるそばを注文したのにカレーライスが出てきたら
◎ヘーイ いらっしゃいませ
おやっさん ざるそば頼むよ
◎あいよっ 今日も蒸し暑くて虫が四匹ですね お客さん
▲何だい それ?
◎ムシ ムシ ムシ ムシ ですよ
▲なんだよ 来たとたん駄洒落かよおやっさん お蔭で背筋が涼しく成ったけどさ ざるそば忘れないでくれよ 先を急いでいるからさ おやっさん
◎お客さん 申し訳ないけど『おやっさん』じゃなくて『マスター』と呼んでくれませんかね
▲マスター? ここは日本そば屋だろ 日本そば屋にマスターは似合わないぜおやっさん ゆかたをドレスと言うようなもんじゃないか マスターと呼ぶなら大将の方がいいよ 何でも横文字にすりゃ〜いいってもんじゃないぜ 俺が大将と呼んでやるよ
◎若い頃カレー専門店に勤めていたんですがその店のマスターが恰好良くて5〜6人いた店員の憧れの的だったんですよ いつかあのようなマスターに成りたいとの一心で働いてきたものでして
▲カレー屋で修行したのに何で今日本そば屋をやってるんだね
◎それを話すと長くなりますが火を止めてゆっくりお話いたしましょうか
▲いいよいいよ 今はそんな時間は無いから火を止めないでくれよ ところで昼の稼ぎ時にお客が俺一人って寂しいね大将
◎ヘイ どういう訳か知りませんが一度来たお客様は二度と顔を見せたことないんですよ
▲おいおい 大丈夫かね そのお客さん達は生きてるんだろうね 心配になってきたよ
◎たぶん死んではないと思いますが・・・
▲たぶんかよ 心もとないな でも俺も男だ 注文したいじょうは食べて帰るぜ ところで未だかねざるそばは
◎ヘイ お待ちどうさまで
▲何だよこれ カレーライスじゃないか 俺はざるそばを頼んだんだぜ それとも何かい この店じゃカレーライスのことをざるそばと呼んでるのかい?
◎いいえ お客様が先を急いでいらっしゃるようなのでカレーなら常時鍋に煮込んでありますのでこの方がよろしいかと思いまして
▲心遣いは嬉しいけどさ 俺はさっぱりしたざるそばが食べたいんだよ カレーは昨日の夜顔が黄色く成るほど食ったから今は見るのもうっとうしいよ
◎そうですか 当店のカレーを食べたら他の店のカレーなんか食べられなくなる程おいしいんですがねお客さん

▲そうかい それなら今度来たらカレーを食べるからさ とにかく今日はざるそばが食べたいんだ
◎それではこのカレーは私が食べましょう
▲悪いけどそうしてくれないか
◎では火を止めて失礼ながらお先にカレーを食べさせて頂きます
▲おいおい何で火を止めるんだよ 客の注文が先だろ 俺のざるそばは何時できるんだよ
◎当店のカレーはピザと同じで冷めると味が落ちますので
▲大将 分かったよ そのカレー俺が食べるよ
◎有難うございます その代り作りかけのざるそばが出来ましたら私が食べておきますから
▲ありがとうよ もう二度と来ないから勝手にしてくれ

おわり