白髪の王子様の会話ドラマ おたく家族シリーズ ⑧おばあちゃんの編み物おたく

⑧おばあちゃんの編み物おたく
◎おばあちゃん 又編み物してるね 今度は何を作ってるの?
▲何だろうね 私にも分からないんだよ のぞみちゃんならこの敷物何に使いたいと思う?
◎敷物なんだ それなら私の部屋の床に敷きたいな 板の間だから夏は足の裏がベタベタするし冬は冷たいから助かるよ
▲そうかい それならこれが出来上がったらのぞみちゃんの部屋の敷物にしようね
◎やった〜 ねえねえおばあちゃん その敷物何時頃出来るの
▲そうだね〜〜 15年は掛からないと思うよ
◎ちょっと〜〜おばあちゃん もう少し早くしてくれないかな〜 私その頃お嫁に行っちゃってるかも知れないし おばあちゃんだってそれまで元気かどうか分からないじゃん
▲私なら棺桶に入っても網み続けるから大丈夫だよ 出来上がったら棺桶の蓋を開けて呼びかけるから取りにおいで
◎なんだか〜夏なのに寒くなって来たな〜〜
▲ほっほっほっ 冗談だよ ほれっ のぞみちゃん この押入れの中を覗いて御覧
◎わっ わっ 編み物でいっぱいじゃん 丸いものや四角それに星形まであるよ 靴下や手袋 それにこれはマフラーだね すごいな〜これ全部おばあちゃんが編んだの 
▲そうだよ おじいちゃんが亡くなってから暇潰しに編み物を始めたんだけど気が付いたらこんなにいっぱいになってしまったんだよ その中からのぞみちゃんの好きな敷物を5〜6枚選んで出しておくれ それを部屋の大きさに繋ぎ合わせれば直ぐに完成だよ
◎成程〜 おばあちゃん頭がいいね お父さんはきっとお爺ちゃん似だね  
▲ほっほっほっ あなたのお父さんは短気なところもお爺ちゃんにそっくりだよ
◎お母さんから聞いたんだけどお爺ちゃんはちょっと気に食わない事があると直ぐにちゃぶ台をひっくり返したんだってね 私にはとても優しかったけど
▲お爺ちゃんは照れ屋だったから口で言えない分ちゃぶ台をひっくり返して表現したんだろうね
◎変なの ちゃぶ台だっていい迷惑だよね
▲ほっほっほっ それで思い出したけど ある日お爺ちゃんが古いちゃぶ台を引っ繰り返したら足が一本折れちゃってね お爺ちゃんもそれを知ってて治さなかったから夕方三本足のままそっとお酒と漬物を載せて出したんだよ
◎おもしろい おもしろい それでどうなったの
▲お爺ちゃんはテレビを見ながら足の無い方のちゃぶ台に肘をついたもんだから見事にでんぐり返ってね おでこに沢庵の漬物を載せて目を白黒させていたのを思い出すと今でもお腹が痛くなるほど可笑しくなるよ
◎やった〜〜 おばあちゃんも中々やるね〜〜我慢するだけが女の仕事じゃ無いもんね おばあちゃんは女の鏡だよ 誉めたところで一つお願いなんだけど 勉強部屋の椅子に敷く敷物も一つほしいんだけどいいかな
▲ほっほっほっ 褒められた後じゃ断れないね しかし可愛い座布団が有ったんじゃなかったっけ
◎あれは三年生の時に買ったものでヨレヨレだし文雄とボクシングの真似事をして丸めてグローブの代わりに使ったら綿が飛び出して駄目になっちゃったんだ
▲おやおや お転婆さんだね のぞみちゃんも
◎小学生でも自分の身は自分で守る時代だからね 大変なんだよおばあちゃん
▲そうなのかえ のぞみちゃんは学校のウグイス嬢として皆んなの心を和ませ 勉強も頑張って 人の世話にならないで自分を守ろうとするなんて のぞみちゃんこそ女の鏡だよ さて誉めたところで肩を叩いてくれないかね 編み物をすると肩が凝るんだよ
◎お互い誉められた後は気を付けようね おばあちゃん
▲そうだねのぞみちゃん でも褒められるって気持ちいいね 誉めて肩を叩いてもらうなんてもっと気持ちいいよ のぞみちゃん

つづく