④ミステリー体験
◎いかりやさんはミステリーな体験をしたことが有りますか
☆古稀を迎えるまで生きてれば誰でも２度や３度ミステリーな体験はしていると思うぜ
◎私達から見るといかりやさんが３０回以上もアフリカに行ってるのにドリフのメンバーを一度も連れて行かなかった事がちょっとしたミステリーに思えるんですが
☆初めてアフリカ旅行に行くと決めた時には一応ドリフのメンバー全員に伝へたさ そこで誰か一緒に行くかと聞いたら誰一人同行すると言わないどころか加藤などは『わざわざアフリカまで行かなくても毎日ゴリラを目の前で見てるからそれで充分だ』と言うし他のメンバーも『象やカバのお尻を見るよりハワイにでも行って美人の水着姿を見た方のがよっぽど楽しい』とぬかしやがったのさ だからやつらには二度と声を掛けなかっただけのことさ
◎そうですか いかりやさんは女性のお尻を見るより象やカバのお尻を眺める方のが好きなんですね なんたってビッグだしそれに下着も付けてないですからね
☆バカモ〜ン 味噌糞一緒にするな〜 象やカバがパンツを履いたら巨大なウォシュレットが必要になるじゃないか
◎言ってる意味が良く分かりませんが いかりやさんが体験したミステリーとはどんな事でしょうか 教えてくれませんか
☆そうだな〜一番初めのミステリー体験といえばロカビリー時代に知り合った初めての外国人はまだ１８歳で金髪の可愛い子でさ名前がテリーと言うんだ
◎それで？
☆だから ミス・テリーだよ
◎・・・・・いかりやさん 天国にも白け鳥が住んでるんですね 今南の空に向かって飛んで行きましたよ
☆お互い古稀を過ぎると会話に潤いが無くなってくるな お主リップクリームを持ってたら分けてくれないか
◎唇が潤っても脳がカサカサじゃしょうがないでしょ
☆ガ〜〜〜ン その言葉がカサカサなんだよ 思いやりのかけらも無いじゃないか
◎年寄り同士の喧嘩はアンパンマンも見て見ぬふりして素通りするそうですからこのへんで止めにしましょうよ ２番目のミステリーを聞かせてくれませんか
☆そうよな〜〜 これは結構恐ろしい話だぞ お主も年だからおしっこを漏らさずに最後まで聞けよ
◎漏らしたいですね〜 パンツがビショビショになるくらい怖い話を聞かせてくださいよいかりやさん
☆その日はやけに寝苦しくてな 何度もウトウトしては目が覚めるということを繰り返していたような気がするんだ
◎いいですね〜 いいですね〜
☆こんな夜中に眠り薬を買いに出かける訳にもいかないしどうしようかと考えていた時にスーっと音も無く誰か部屋に入ってきたような気配を首筋で感じたんだ
◎いいですね〜 いいですね〜
☆うるさいんだよ君 黙っててくれないか
◎失礼しました
☆恐る恐る気配のする壁際に目をやると なんとそこには白衣の女が怨めしそうに立っているじゃないか
◎待ってました大統領゜
☆あのさ 俺は昇進の挨拶をしてるんじゃないぜ ぞ〜〜っとするようなミステリーの話の最中に『待ってました大統領』はないだろ 掛け声も時と場所を考えろよ
◎重ね重ね失礼をしました どうぞ先を続けて下さい
☆もう少し様子をみるか それとも思い切って飛び起きて正体を暴こうかと考えていた矢先にその女の白い手がす〜っと俺の首に向かって伸びてきたんだ
◎ウッ・ウッ・ウッ
☆何だね今度は変な声を出して まさかお主オシッコを漏らしてるんじゃないだろうな
◎いえいえ 『大統領』の掛け声をぐっと我慢していただけです どうぞ先を続けて下さい
☆勇気を出して青白い腕を捕まえて『誰だ』と白衣の女を睨んだら『いかりやさん大分うなされていましたが大丈夫ですか』と聞き覚えのある声がしたんだ それで良く女の顔を見たら何のことは無い 何時もの看護婦さんだったんだよ
◎いつもの看護婦さんということは病院に入院してたということですか 白衣の女って言いましたけど看護婦さんなら白衣は当たり前じゃないですか
☆そうだよ
◎そうだよなんて澄ました顔で言わないで下さいよ それはミステリーなんかじゃなくて単なる勘違いじゃないですか
☆ミステリーの多くは勘違いなんだよ 恐怖心で正常な判断が出来なくなり見えないものまでが見えた錯覚に陥り脅えてしまうんだな だけどよ今俺が話したミステリーにはあっと驚く恐ろしい続きがあるんだよ
◎えっ 本当ですか パンツびしょびしょの恐ろしい話ですか
☆そうとも 良く聞けよ その看護婦は日本人とアメリカ人のハーフでな 名はテリーと言うんだ これぞ本当のミス・テリーじゃないか 怖いですね〜 怖いですね〜
◎あ〜〜あ なにが怖いですね〜ですか 出がらしの二番煎じのミステリーじゃないですか いかりやさんに期待した私が馬鹿でしたよ 『お〜〜い白け鳥君 もう一度こっちに戻って来てくれないか〜 甘酒をたんと御馳走するから皆で白け踊りでも踊ろうぜ〜 お〜い白け鳥君〜聞こえるか〜い
続く
