白髪の王子様の会話ドラマ 時空神社シリーズ いかりや長介 ⑤燃えるような恋

⑤燃えるような恋
◎いかりやさんは燃えるような恋をしたことがありますか
☆馬鹿にするなよ 俺だって男だ 好きに成った女は両手の指じゃ足りない位だぜ
◎そうですか 好きになった女の数が両手じゃ治まらずに両足を使ったとしても片思いじゃ自慢になりませんよ 私が聞いてるのは相思相愛の燃えるような恋のことです
☆馬鹿を言っちゃいけないよ 片思いだって好きに成ったら燃える恋なんだよ 切ない恋程メラメラと燃え上がって胸を焦がすのさ
◎成程 それでいかりやさんは切ない恋に燃え尽きて今の様に灰老人に成ってしまった訳ですね
☆灰老人とは何だ 俺は未だ灰になんか成ってないぞ
◎いかりやさん ここは天国ですよ いかりやさんは地上でポックリ逝って灰に成り千の風に乗って此処に到着したんじゃないですか
☆おう そうだったな 俺はひょんな事からあの世がこの世になってこの世で昔のあの世を思うややこしい立場に置かれているんだっけ 忘れてたよハハハハ
◎いかりやさんはあの世でもこの世でも変わりないですね 灰老人なんて冗談ですよ これからも二つや三つ燃える恋をしてもおかしくありませんね
☆そうよ 男は幾つに成っても若い女の子のミニスカートの中にはどんな世界が広がっているのだろうかと興味を持つことが大切なんだよ 
◎それでしたらスカートの中に顔を突っ込んで見るしかないですね
☆下品なこと言うなよ 加藤茶だって『ちょっとだけよ〜』と言ってたじゃないか 見えそうで見えないスリルとサスペンス 見えたとしてもチラッとしか見えないところに男はときめきを感じるんじゃないか
◎そうですかね 私は『チラッ』より『ガバッ』のほうが好きですけどね
☆君は確か白髪の王子様と言ってたよな
◎はい そうですが 何か
☆王子様にしては気品よりも下品が上回っているような気がするんだけどな〜
◎それは気のせいでしょ 私も相手によって品を合わせていますから その話は横に置いといていかりやさんの相思相愛の燃えるような恋のお話が聞きたいのですが
☆そうだな〜 初めての相思相愛と言えば高校の卒業式の時学生服の第二ボタンを貰いに来た彼女との恋だろうな
◎私の頃はボタンは一つしか有りませんでしたけど
☆ズボンじゃないよ上着だよ どこを覗いてるんだね君は
◎失礼しました ところで何で第二ボタンなんですかね 
☆そんな事も知らないのかね君は 第二ボタンが一番心臓に近いので胸キュンの彼にその思いを知ってもらいたいための求愛行動みたいなもんさ
◎そうですか それでいかりやさんは彼女に第二ボタンをあげたんですか
☆そうさ 俺も彼女のことが好きだったから目の前で千切って渡したよ
◎そうですか その時ボタンが恋の炎でボ〜ッと燃えたんですね
☆君の表現はどこか漫画チックなんだよな 俺と彼女は共にギター好きのバンド仲間だったんだ
◎ギターのように彼女を抱いたのは何時頃ですか
☆そう先を急がせるなよ ものには順序というものが有るんだからよ さっき桃太郎の話をしたばかりじゃないか『昔 桃がどんぶりこで 鬼退治でした めでたし めでたし』じゃ面白くもなんともないだろ
◎はいはい重ね重ね失礼をしました どうぞ話を先に進めて下さい
☆卒業後も月に2〜3度はデートを重ねていたけど手を繋いで歩くだけでハッピーだったね 彼女の誕生日に公園のベンチでギターを弾きながら自作の曲をプレゼントしたら彼女がとても喜んでくれて俺のホッペに『チュッ』とキスをして俺に寄り掛かってきたんだ
◎やったぜベイビー そこでいかりやさんは彼女をベンチに押し倒してチュチュチュの嵐でベンチが燃え上がったんですね
☆君ちょっとそこのバケツを頭から被っててくれないか 君が横から口を出す度話のテンポが乱れるんだよ
◎申し訳有りません 静かに聞きますのでバケツは勘弁して下さい
☆俺と彼女はまだ若かったので友達と恋人の間を行ったり来たりしてた一番楽しい時期だったのかも知れないな
◎始めチョロチョロと中パッパを行ったり来たりしてたんですね
☆君は窓際のトットちゃんよりも落ち着きがなくて騒々しい男だな
◎反省中です
☆高校を卒業してから初めての夏に二人で川越の花火大会を見に行かないかと彼女を誘ったら彼女も『誘ってくれて有難う』と嬉しそうにOKしてくれたんだ
◎・・・・
☆何か言いたそうだね
◎反省中です
☆彼女が浴衣を着て来たのには驚いたね テンションが上がり過ぎちゃってさ『よっ』と何時もの挨拶の声も裏返っちゃったよ 途中までは手を繋いでいたけど我慢出来ずに手を腰に回して強く抱きしめたんだ 聞いてるかい
◎反省中です
☆『あ〜〜ん そんなに強く抱きしめたら帯が緩んでしまうじゃない』と彼女が言うから『今日の君はこうしてしっかり抱いてないと誰かにさらわれてしまいそうなぐらい素敵なんだよ』と言いながら正面で向き合って思い切り抱きしめたんだ・・・白髪の王子殿 黙って睨まれてると余計に話ずらいんだよな 相槌ぐらいうってもいいんだぜ
◎反省中です
☆顔は全然反省してる様には見えないけどまあいいか 『あ〜〜ん 長一さん苦しいよ あ〜〜ん』
『好きだよ美奈』『あ〜〜ん もっと優しく あ〜〜ん』
◎いかりやさん いかりやさん『あ〜〜ん』はもうそのくらいにして話を先に進めてくれませんか インタビューの時間も残り少なくなってますので
☆なんだよ 一番盛り上がってきたところじゃないか
◎そんなに燃えた恋なのに何で別れることになったんですか そこが知りたいですね
☆人の幸せな話より不幸な話が聞きたいんだな君は 他人の不幸は蜜の味というからな
◎そんな意地悪な言い方しないで下さいよ 今恋愛中の若者へのアドバイスにもなればと思って伺ってるんですよ
☆言葉の行き違いというか 勘違いというか ほんの少しの過ちが相手を大きく傷付けてしまったんだな
◎是非そこのところを聞かせて頂けませんか
☆彼女があ〜〜ん あ〜〜んと甘い声を連発するので『美奈の声はあんこに蜂蜜を掛けたように甘い声だね』と言おうとしたのに口から出た言葉は『うんこに蜂蜜を掛けたような声だね』だったんだ
あじゃ〜〜
☆慌てて『御免 御免 うんこじゃなくてあんこの間違いだ』と訂正したんだけど『どこの世界にあんことうんこを間違える人がいるのよ』と俺の腕を振り払ってプイと横を向いてしまったんだ そこでひたすら謝れば良かったのに言わなくていい言い訳を言ってしまったんだ
◎どんな?
☆『あんこ』も『うんこ』も遠くから見れば同じように見えるじゃないかと
あじゃ〜〜
☆そしたら彼女が『あらそう そういうことは遠くから見たら私もうんこも同じように見えるということね』とガラスを金属で引っ掻いたような声を発して走り去ってしまったんだ その時大きな花火がドカ〜ンと弾けて俺達の恋も弾けてしまったのさ ロマンチックな恋の話だろ
◎いかりやさんのインタビュ=がうんこの話で終わるとは思いませんでしたね ところで彼女はそんなに可愛くて魅力的な女性だったんですか
☆それがよ 恋は盲目とは良く言ったもんだね すっかり冷え切った頃定期入れから彼女の写真が出て来たんだ それを見て驚いたね あんなに可愛く思えた彼女なのにまるでその写真は高木ブーがスカートを履いたように見えたんだよ
◎おやま〜 もしこの天国で再会したら『コマンタレブ=』と挨拶出来ますね
☆ハハハハ 君も洒落たこと言うじゃないか インタビュアーなんかやめて俺と新ドリフターズを結成しないか 
◎いえいえ 私はまだここから見ればあの世の人間ですから無理ですよ
☆よし それならこの天国で再会したらでいいよ 頼むぜ
◎あ〜〜ん いかりやさんそんなに強く手を握らないで下さいよ あ〜〜ん
☆だめだこりゃ