白髪の王子様の会話ドラマ  ドリーム⑨ 原っぱの秋

⑨原っぱの秋
(トンボ)コスモスさんこんにちわ 私達の秋がやって来ましたね
(コスモ)あら 赤トンボさんこんにちわ 今日も真っ赤なドレスが良くお似合いね 秋にぴったりだわ
(トンボ)いつも同じ服の着たきり雀で代わり映えしないわ たまには御へそを出してビキニ姿で彼の気を引きたいんだけどちょっと無理ね
(コスモ)ははは 貴女のビキニ姿を彼が見たら鼻血ぶ〜で益々赤くなっちゃうわよ
(トンボ)ハハハ コスモスさんは何時も明るくて優しくて『乙女の真心』という花言葉がピッタリだわ
(コスモ)有難う だけど私達見かけによらずガッツバリバリなのよ 台風でなぎ倒されても一番早く立ち直るのは私達なの 土に養分なんか無くても水はけが良くて日当たりさえ良ければ人間の背丈なんか軽く超える程成長できるのよ エコで地球に優しい花のコンテストが有ったら優勝間違いなしだわ
(トンボ)本当に見かけによらないわね 見た目は可憐な少女みたいなのに話すと井戸端会議のおばちゃんだわ
(コスモ)おばちゃんとは失礼ね お姉様でしょ どちらにしても人間と同じで花も見かけによらないものでザーマスことよ赤トンボさん ほほほほ
(トンボ)その笑い方もザーマス言葉もコスモスさんには似合わないわ 清楚な感じが一番お似合いよ
(コスモ)私はやっぱ平民か はははは
(トンボ)ところでコスモスさん この前ふと人間の家の中を覗いたらコスモスの花が食卓のお皿に載っていたけど人間って花を見るだけでなく食べることもするの?
(コスモス)そうよ 未だあまり知られていないけどコスモスの花びらは結構美味らしいのよ 赤トンボさんも今私をかじってみたら
(トンボ)と とんでもない 私は植物は食べませんから それにしてもコスモスさんはアンパンマンみたいね 自分の身体をお腹のすいた人に食べさせてあげるなんて
(コスモ)植物はみんなそうよ 食べられても もぎられても 踏みつけられても恨んだり憎んだりする心は神様に預けてあるの
(トンボ)まるで悟りを開いちゃったみたい
(コスモ)そうよ 悟りも開いて花びらも開いてこの世を楽園にしようと日々粉骨砕身努力してるんでザーマスことよ
(トンボ)ほらほら またおばちゃまになっちゃって この世を楽園にしようなんて夢もここまで大きいとホラに聞こえてくるわ
(コスモ)大きな目をぐりぐりさせて文句を言わないでよ それにしてもあんた超が付く程大きな目をしてるね 頭の殆んどは両目で覆われていて脳みそが入る隙間も無いんじゃないの
(トンボ)大きな目には理由が有るのよ 私達トンボ仲間の殆んどは一生無事に暮らすことなく敵に襲われて命を落としてしまうの こうして話している間も四方八方上下左右遠近を常に監視してるのよ
(コスモ)まるで幾つも目があるみたいね
(コスモ)そうよ この目は複眼で一万個以上の個眼からできてるのよ だからこうして大きくなってしまったの それにコスモスさんと同じように私達トンボも一部の人間に食べられているのよ 子供のヤゴなんかイナゴよりも香ばしくて美味しいと評判なの 油断も隙もありゃしない この原っぱで大の字になって寝ても安心な世の中になってほしいわ
(コスモ)あなたもおばちゃま口調になってきたわよ 飽食に飽き足らず人間はスポーツ感覚で何でも食べるのよ 新ゴジラよりも恐ろしい生き物だわ
(ススキ)ちょっとちょっとお二人さん 私も井戸端会議に入れておくれよ 新ゴジラがどうかしたのかい? 
(トンボ)あらススキさん 私達の会話を盗み聞きしてたの ここにも油断できない人がいたわ 
(ススキ)盗み聞きはないでしょ 四方八方に目を配りながら四方八方に聞こえるような大きな声で話していれば向こう三軒両隣は耳を塞いでもあんたの話声は筒抜けだわ
(コスモ)ススキさんもあっというまに大きく成ってもう私より大きくなったわね
(ススキ)そうよ 秋といえばススキでしょ 秋の月も私有っての名月だし秋の七草にも選ばれているから今伸びなくて何時伸びるかといった感じよ
(トンボ)鼻息荒いわねススキさんは でもコスモスさんが乙女だとするとススキさんは生まれた時から白髪頭のお婆あさんみたいだわ
(ススキ)さっきコスモスさんが花も人間と同じで見かけによらないと言ったばかりじゃない 白髪頭は人間の話で私達ススキは純白で穢れのない心が花と成ったという伝説から秋の国からやって来た妖精と言われているでざーますことよホッホッホッ
(コスモ)ちょと〜 ススキさんもザーマス言葉は似合わないわよ ちっともお金持ちに見えないもの 向こう三軒両隣から味噌や醤油を借りて生活してるんじゃないの
(ススキ)本当にコスモスさんは見かけによらず悪態の権化みたいなことを言ってくれるわね だけど悔しいけど人間も世間から取り残されたようにひっそりと暮らしているお年寄りを枯れススキのようだと表現するのよね 失礼しちゃうわ きっと私達が春に咲いたらもっと優雅なイメージに受け止めてくれると思うのよ 今度生まれる時は春に生まれてみたいものだわ
(トンボ)それじゃお月様が困っちゃうんじゃないの 秋の名月はやっぱりススキ越しに見るのが一番だもの
(ススキ)そんなことないわよ そうなったら今度は春のおぼろ月夜を飾るから
(コスモ)さすがススキさんは抜け目がないわね
(ススキ)こらっ コスモスお婆婆 ええかげんにせ〜よ〜 抜け目がないとは何じゃ 
(トンボ)やれやれ 秋の原っぱの主役同士が喧嘩したら夕焼け空に笑われるわよ 三人揃ったところで秋の歌でも歌いましょうよ
(ススキ)秋の歌なら任して頂戴 私秋にぴったりな歌知ってるから
(コスモ)あら どんな歌 ちょと歌ってみてくれない
(ススキ)いくわよ ♪昔 俺が夕焼けだった頃 親父は胸焼けで 御袋は霜焼けだった いえ〜い♪
(トンボ)それって歌じゃなくて漫談でしょ
(ススキ)そうだっけ? 夕焼けが出て来るから秋にピッタリだと思ったんだけどな〜
(トンボ)夕焼けなら誰でも知ってる有名な歌があるじゃないの ほら私を見て思い出さない?
(コスモ)赤トンボさんを見て思い出す歌といえば・・・あっ分かった赤ずきんちゃんの歌でしょ
(ススキ)違う違う 赤とうがらしの歌よ
(トンボ)もう 二人共意地悪なんだから
ハハハハ ハハハハ ハハハハ
                おわり