白髪の王子様の会話ドラマ  ドリーム⑧ てるてる坊主と風鈴

てるてる坊主と風鈴
☆ちょっと〜 てるてる坊主さんもう少し離れてくれない 風で揺れるとぶつかって澄んだ音色が出ないじゃないの
●僕のせいじゃないよ 誉ちゃんが明日の遠足が良い天気になるようにとここに結んだんだ
☆誉ちゃんはお父さんに似てせっかちだから周りのことを良く考えないで行動するのよね
あなたもその誉ちゃんが作ったんでしょ くしゃくしゃだもの
●そうなんだ 初めの作品は新聞紙でおだんごを二つ作ってそれをセロテープでくっ付けて足が三本もあったんだ それを見たお母さんが布切れを誉ちゃんに渡して作り方を教えてようやく今の僕が誕生したという訳です
☆それにしても不器用だね その姿はてるてる坊主じゃなくてクシャクシャ坊主だよ そのクシャクシャしたところに顔を書こうとしたもんだから顔中真っ黒で墨のお化けみたいだよ
●そのせいか風鈴さんもクシャクシャにみえます
☆ちょっと〜 私は風鈴小町と呼ばれる程の優雅な姿と美声で多くの人から愛されているんだよ クシャクシャな目を突っ張って良く見て御覧よ
●目に墨がかかったようで良く見えないんです 残念だな〜 でもね本当はてるてる坊主の顔は願いが叶ってから書くのが伝統的な儀式であり作法なんです だから僕はもう顔を書かれたから明日の晴れを約束する義務はないということになるんです そのことを知らない人が多いんですよね
☆そうなんだ でもそれじゃ誉ちゃんが可哀そうじゃない さっきも『♪てるてる坊主 てる坊主 あした天気にしておくれ♪』と楽しそうに歌っていたわよ
●でもね その歌の3番はどんなことが歌われているのか風鈴さんは知ってるのかな
☆えっ? 3番まであったっけ 願いが叶ったら金の鈴や甘いお酒をあげるとかまでは聞いたことあるけどその後は知らないわ
●3番は願いが叶わなかった時のお仕置きが歌に込められているんだ
☆へ〜どんな文句なの教えて
●♪てるてる坊主 てるぼうず あした天気にしておくれ それでも曇って泣いたなら
 そなたの首をちょん切るぞ♪
☆ひえ〜〜 雨じゃなくて曇っても首をちょん切られちゃうの 寒ぶ〜〜〜
●そうだよ 僕らは用が済んだら直ぐに忘れられてしまう俄か坊主なんだからもう少し3番の歌詞を優しい文句に替えてほしいんだ それでなくても首つりのような恰好でぶら下がっているんだから
☆そうよね 曇りだったらお尻をペンチで摘まんでひねるとか雨だったら頭をハンマーで殴るとかそのへんで勘弁してほしいわよね
●風鈴さんも可愛い声して残酷なこと言いますね お坊さんが女性を遠ざける理由が分かる気がしますよ
☆あんた小坊主のくせに生意気なこと言うね その年で女心が分かってたまるかってんだ べらんめ〜
●風鈴小町さんがべらんめ〜言葉を使うなんて驚いたな〜 ところで風鈴さんは夢とか悩み事なんか無いんですか
☆それは誰だって有るでしょう
●どんな事ですか?
☆最近風鈴の音がうるさいと苦情を言う人が多くなってきたのよ 風鈴だけじゃないのよ 
小鳥のさえずりや癒しの音として親しまれてきた波の音や川のせせらぎがうるさいと言って旅館の部屋を替えてもらう人も多いんだって 風流という言葉もだんだん死語に成りつつあるみたい
●ふ〜ん 文句を言った方が勝ちの世の中になってきたんですね
☆風鈴の音がうるさいなんて信じられないわ あの有名な小澤征爾さんが素晴らしい音色だと言ってオーケストラに風鈴を楽器として使用したぐらいなのに
●音楽と言えば 3番は気に食わないけど僕たちには『てるてる坊主』という誰でも知ってる歌があるけど風鈴の歌ってあまり聞いたことないね
☆そうなのよ 昔から庶民に親しまれてきたのに国民の誰もが知ってるような風鈴の歌がないのよ 寂しいわ 誰か『赤とんぼ』とか『はとぽっぽ』のような子供も大人も楽しんで歌えるような曲を作ってくれないかしら 
●それが風鈴さんの夢なんだ 早く出来るといいね
☆でもね 最近ちょっぴり話題になってる風鈴の歌があるの いい歌だから歌ってあげるね
  ♪ふうりん ちりちり なりました
   赤ちゃん すやすや ねましたよ
   ふうりん ちりちり なりました
   にっこと 赤ちゃん 笑います♪
ねえ 良い歌でしょ ??? ちょっとてるてる坊主君聞いてる? 子守唄のつもりで寝ちゃったのかな それとも明日の天気を苦にして首を吊ってあの世にいっちゃったのかな 取り敢えず月並みな言葉だけどご愁傷様でした チ〜〜ン
●ちょっと〜 風鈴さん 僕はまだ生きてますよ 変な音出さないで下さいよ
     チ〜〜〜ン

             おわり