白髪の王子様の会話ドラマ あっぱれ城 ⑦ 城下町散策

城下町散策
●姫、重ねて申し上げますが本日はお忍びでの散策でありますからやんちゃな行動は控えるようお願いしますぞ。
◎分かっておる何度も同じことを申すな、爺の言葉は歯に挟まったネギのようにうとましいことよ。
●お里も源太も外では姫とは呼ばずにお嬢様と呼ぶように、よいな。のっそり銀次と私は後から付いて行くゆえ何か用があったら声を掛けるように。それでは参るといたそう。
◎外の空気はすがすがしくて気持ち良いの〜お里。
△それはお嬢様の気持ちがウキウキしてるからだんべ。
◎ははは、そうかも知れんの〜。
あじゃっ、お嬢様あぶね〜、飛脚がすっ飛んでくるだ、こっちこさ除けろ。
◎おう、あれが飛脚か、フンドシだけの素っ裸ではないか、源太よ飛脚はいつもあんな姿で走っておるのか。
*あたぼうよ、汗で濡れた着物なんぞ邪魔になるだけだ。
◎まるで風が通り過ぎたようであったな。
*あれはまだ遅せーぐらいだ、特級便ともなれば江戸から京やみちのくまで普通15日ぐれーかかるところを3〜4日で着いちまう。もちろん途中何人もの飛脚仲間と交代はするけどよすげー速さだろ、飛ぶような速さだから飛脚と言うんでい。お嬢様も好きな人が江戸にいるなら恋文を飛脚に頼めば早けりゃ翌日には相手に届くぜ。
◎そんなもんおらん。
*威張って言うことじゃねーぞ、牛や豚の嫁になるなら恋文など書かなくてもいいけどよ。
◎お里、源太の口に足を突っ込んでグリグリしてもよいぞ。
△ハハハ、だけんどよ、おらだって好きな男はおるぞ、イノシシの雄じゃねえぞ人間だぞ。
*ほらみろ、こんなごっつい女だって好きな男の一人ぐれーいるもんだ、いねーのがおかしいくらいだぜ。その時になって慌てないようにうっかり爺を相手に恋文の練習でもしておいたほうがいいぜ。
◎どんな事を書けば良いのじゃ。
*そうだな〜、うっかり爺なら『奥歯はガタガタしてませんか』とか『夜中に何度便所に起きますか』でもいいんじゃね〜の。
◎そんなの恋文ではなかろう。
△源太はやっぱり馬鹿だな〜。おら達と違ってお嬢様ともなれば和歌等に自分の気持ちを込めて送るもんだべや。
◎おやっ、あれは何じゃお里。
△あれは風鈴売りだ。
◎なんと綺麗な、お里2〜3個取ってきておくれ。
△取って来いと言われても銭こさ払わんと泥棒になっちまうだ。
◎ほう、お金か、・・・爺っ、ちょっと20両ばかり持って来ておくれ。
●20両とはまた大金を、いったい何に使うおつもりで。
◎あの風鈴を買うのじゃ。
●20両も払って風鈴を引いている親父ごと買うつもりですか、15文か20文もあれば充分です。これを渡してお釣りを貰いなされ。
◎お釣りとは何じゃ。
*おいおいお釣りも知らねえのかよお嬢様は、俺が教えてやるからその銭持って付いてきな。
◎お里も一緒に来ておくれ、そなたも一つ選ぶがよい。
△んだべか。
◎おう、赤青黄色と鮮やかに輝きながらチリンチリン、コロンコロンと可愛い音色を響かせ何と心地よいことか、全部買って庭の木立に飾ったらさぞかし美しいことであろうに。
△そんな事しだら風の強い日にゃうるさくて寝らんねーぞ。一個で充分だべや。
*お嬢様よ、早くしねーと今日は飛脚と風鈴だけで日が暮れちまうぜ。女はこれだから困っちまうんだよな〜。
◎そう急かせるな源太、自分で好きな物を選んで買う楽しさは格別じゃ、のうお里。
△おらはもう決まったぞ。
◎早いのうお里は、それでは私はこれかこれにしよう、お里はどちらが良いと思う?。
△そんなの自分で選ぶだ、おらが選んだら自分で選ぶ楽しさがなくなっちまうでねーか。
◎おう、そうであったな。それではこれにしよう。源太待たせたなそれでは先にまいろう。
×ちょっとちょっとお嬢さん、まだ代金を頂いておりませんが。
◎おう、そうであったこれで頼む。
×はい、まいどありー、お釣りをどうぞ。
◎おや、一枚しか渡してないのにこんなに多くのお金をもらってよいものかの〜。
*お嬢様、いいからその銭しまって先に行こうぜ。
◎そうかこれがお釣りか、はははは楽しいのう源太、手を繋いで歩こう。
*ブルブルブル、とんでもね〜。そんな姿仲間に見られたらガキ大将の座を下されてしまうわ。
◎さようか、大将とは辛いもんじゃの〜、それではお里、手を繋いで歩こう。
△んだな〜。
◎お里、この風鈴を髪に飾ったら素敵なかんざしになると思わぬか。
△おらは髪に飾ろうが又にぶら下げようがかまわねーがよ、お嬢様が髪に刺したらよ、おつむの足りない女ごと思われるだぞ。
◎ははは、思わば思わせておけばよい、楽しんだ方が勝ちじゃ。
△いいずら、二人してアホ面してあるくべーハハハハ
◎お里、神社の小道で遊んでるあの女の子は何をしているのじゃ。
△あれは『ポックリ』と言って太い竹を高下駄位に切って紐を通し、馬が歩くようにポックリポックリ音を出して歩く遊びだ。
◎後ろの男の子が乗ってるものは?
△あれは竹馬だべ。竹に足を載せる台をこしらえてそこに乗り、馬に乗った気分になって歩く遊びだ。
◎ほう、楽しそうじゃの〜う、私も乗ってみたいものじゃ。
*俺が今度持ってってやるよ、あれで馬の様に駆けたり相撲だってできるんだぜ。
◎おう、源太頼んだぞ、これで楽しい遊びがまた一つ増える。嬉しいの〜う源太手を繋ごう。
*やだと言ってるだろ、も〜う。
◎源太、あそこで怖そうな顔して立ってるお侍は何をしておるのじゃ。
*あれは辻番だ。辻斬りや喧嘩、それに酔っぱらい等を取り締まっているんだ。剣の達人でないと務まらない仕事だぜ。
◎この乗り物は何だ。
*あれは何だこれは何だとまるで2〜3歳の子供みたいだな。これは人を載せるものではなくて荷物を運ぶ大八車だ。大人8人が運ぶ分の荷物をこれ一台で運べるから大八車と言うんだ。
●お嬢様のやんちゃが始まりましたな、髪に刺した風鈴を見て皆笑っておりますぞ。
◎これはやんちゃではない、風流じゃ。それより爺、あそこの人だかりは何じゃ。
●あれは口上売りと申しまして、面白い言葉を並べて物を売る商売人であります。

   ‖ さ〜て御立合い 驚き桃の木山椒の木 結構毛だらけ猫灰だらけ 
   ‖ カタコト音がするのは若い夫婦のタンスの輪ときたもんだ〜〜
◎爺、何故若い夫婦のタンスはカタコト音がするのじゃ。
●タンスも若いうちはカタコト鳴って古く成るとガタゴト鳴るのでありましょう。
◎ふ〜ん そんなもんかの〜。あそこでも台に乗って何か叫んでいる者がおるがあれも同じたぐいか。
●あれは読売と言って世間での色々な出来事を紙に刷って売っている者です。
◎賑やかじゃのう。
☆お嬢様、後ろから馬車が迫っております。今少し左に寄って下され。
◎おう、銀次有難う。何時もこんなに賑わっておるのか。
☆はい、朝夕は物売りも多く出てもっと賑わっております。
△お嬢様 お嬢様 あそこに芝居小屋があるだ、見てーもんだなべや
◎芝居とは歌舞伎のことか。
△本物の歌舞伎はこの辺ではやってねーだ、人情もんとかおどけた芝居だげどおらたちにはその方がおもしれーだ。
◎それでは見物いたそう。・・爺、20両持ってきておくれ。あの芝居を見たいのじゃ。
●お嬢様は何でも20両だと思ってるようですが、あの芝居なら一人50文もあれば見られましょう。私が良い席を取りますので先程のお釣りを返して下され。
◎風鈴を買った時のお釣りを没収するのか。
●はい、私は今日の会計報告をせねばなりません。監査員はあの厳しいちゃっかり奥でありますから。
◎これで全部じゃ。
●お嬢様、もう一枚か二枚残っておりませんか?
◎何じゃその疑った目は、そんなのある訳な・・・おう、あった一枚残っておったわ、爺は歯は抜けておるが目は着物を通すごとく鋭いの〜。
△お嬢様〜 芝居が始まりますよ〜〜。
◎わかった わかった。爺がもたもたしておるのじゃ。
●今まいる 今まいるからそのような大声出すな。
   タタタタ
◎おう、爺が走った はははは 欽ちゃん走りじゃ あれでは忍者になれんの〜。