白髪の王子様の会話ドラマ  ドリーム④新前お化けとカカシ

④新前お化けとカカシ
(お化け)うわ〜お びっくりした〜 こんな薄暗いところにぼ〜っと立ってて驚かさないでよ
(カカシ)お化けがカカシに驚いてどうすんだね この場所はず〜と前から私の指定席なんだよ あんた新前のお化けだね
(お化け)今年の春デビューしたばかりなんだけどカカシさんは僕を見て怖くないんですか? これでもお化けなんですけど
(カカシ)お化けが『自分はお化けなんです』なんて言ってるようではぜんぜん怖くないね 怖くないどころか欠伸が出て来るよ新前お化けさん
(お化け)困ったな〜 もう直ぐお化けの進級試験が有るのにこれじゃまた落第だ
(カカシ)へ〜〜 お化けにも試験が有るのかね
(お化け)そうだよ 真打にならないと人様の前には出られないんだ
(カカシ)そうかい それであんたは今度真打の試験を受けるのかい?
(お化け)とんでもないです 僕はまだ4級だから今度3級への進級試験を受けるんです それに合格しないと又先輩のフンドシを毎日洗濯しなければならないんです
(カカシ)へ〜〜 お化けもフンドシを締めるんだ
(お化け)そうだよ だって女のお化けも居るからブラブラさせてたらセクハラで訴えられちゃうよ
(カカシ)へ〜〜 足は無いのにあそこは有るんだ それにしてもお化けの世界も女が強いんだね
(お化け)そうだよ 冥界をさ迷う我々の世界では男よりも女の方が上席なんだ 男のくせに怨念に捕らわれて成仏出来ないのは男らしく無いと女のお化けからも馬鹿にされてるんだ 
(カカシ)そうかい あんたは14〜5歳にしか見えないけど女のお化けからパワハラされてまで何で冥界にとどまってるんだい 
(お化け)僕を死に追いやった大人がどうしても許せなかったんだ その大人は何事も無かったように振る舞ってて今でも善良な人として村人から尊敬されてるんだ 死んでも死にきれないってこういう事なんだと死んでから気が付いたんだ 馬鹿だよね俺って
(カカシ)そうかい 若いのに随分んと苦しい思いをしたんだね それじゃ私が進級試験に合格出来るように応援してあげるよ 幸い私は人間の姿をしてるから私をその憎らしい人間だと思って練習するといいよ
(お化け)有難うカカシさん 普段教えてくれる先輩も夏は忙しくて新前の僕らに付き合ってる暇がないんだ だから一人で練習しようと思ってここにきたんだ
(カカシ)そうかい 3級に合格したらフンドシ担ぎから卒業できるんだろ ここで逢ったのも何かの縁だ一緒に合格できるよう頑張ろう さあ私をその憎い相手と思って化けて御覧
(お化け)有難う では早速練習させてもらいます
ヒュ〜〜〜 ドロドロドロ ヒュ〜〜〜
(カカシ)ちょっと待った お化けが自分でバックミュージックを奏でるなんて聞いたこと無いよ
(お化け)だって真打にならないと専属の楽団が付かないからしょうがないんだよ
(カカシ)そうかい お化けも見習いは辛いもんだね さあ続けておくれ
(お化け)ヒュ〜〜〜 ドロドロドロ ヒュ〜〜〜
お化けだぞ〜 お化けだぞ〜 恐ろしいお化けだぞ〜〜〜
(カカシ)ストップ ストップ 駄目駄目 お化けが自分のことをお化けだぞなんて説明してるようじゃ説明しないと分からない駄洒落のようなもんじゃないか 男は黙ってサッポロビールだよ 『沈黙は金』という言葉はお化けのために有るんだ ただ黙って恨めしそうに相手の目を睨みつければいいんだよ
(お化け)若し相手が気が付かないで通り過ぎちゃったらどうするの
(カカシ)その時は無言のまま後ろからトントンと肩を叩いて振り向かせるのさ その時あんたがびっくりしちゃだめだよ それにあんたは両手をオチンチンの前でブラブラさせてるけどオヘソの上まであげないと怖く見えないよ それからあんた力が入って怒り肩に成ってるからもっと力を抜いて撫で肩で弱弱しく見せると益々恐ろしいお化けになれると思うんだけどな〜
(お化け)カカシさんは随分お化けに詳しいけど昔お化けやてたんですか?
(カカシ)冗談じゃないよ 私はこの世に恨みつらみなんか何も無いよ 私はあんたと逆でね この田んぼの見張り役を任せてくれたお爺ちゃんに恩返しすることが夢なのさ だけど一本足で動けないから思うように野鳥を追い払うことが出来なくて悔しい思いをしてるんだよ
(お化け)足を消すのはお化けの得意技だからその竹の足を消して動けるようにするのは僕にだって出来るよ
(カカシ)本当かい 是非その術を教えておくれ そしたら田んぼの中を駆けずり回って害虫や害鳥を追い払ってお爺ちゃんに恩返しをしたいんだよ
(お化け)いいよ進級試験合格の秘訣を教えてくれたお礼に僕が足消しの方法と呪文を教えるからその通りやってご覧 先ず大きく息を吸って竹の足に3度フ〜ッ フ〜ッ フ〜ッ と吹きかけてから今度はドロン ドロン ドロン と3度呪文を唱えるんだ そうしてゆっくり行きたい方向に体を傾ければ動き出すよ
(カカシ)どれどれ フ〜ッ フ〜ッ フ〜ッ・・・ドロン ドロン ドロン ・・・右へお願い・・あっ あっ動いた動いた 後ろへお願い・・あっ 動いた動いたすっごいお化けさん有難う
(お化け)まだ僕と同じ4級の動き方だけど少し練習すればフンドシ担ぎをしなくても大丈夫だと思うよ
(カカシ)こいつ敵を取った気でいるな ハハハハ でもお蔭でこれでお爺ちゃんに恩返しが出来るよ 有難うお化け君 
(お化け)人から感謝されるって気持ちいいね カカシさんは人じゃないけど
(カカシ)そうだよ私も豊作になるとお爺ちゃんからご褒美にと出来立ての新米とお菓子を貰えるんだよ それが何よりの喜びなのさ こんな自分でも立ってるだけで役に立つんだとね お化け君も今は恨みつらみで胸がいっぱいだろうから取り敢えずは進級試験に向かって頑張るんだね 合格を祈っているよ
(お化け)有難う 今度会う時はカカシさんがびっくりしてオシッコ漏らす位に恐ろしいお化けに成ってくるからね
(カカシ)いいね楽しみにしてるよ ここは田んぼだから馬のような凄いションベンを垂れても大丈夫だからね ハハハハ
(お化け)ハハハハ そうだね ハハハハ ・・・ いけないお化けは笑っちゃいけないんだったっけ 
(カカシ)ハハハ あんたはお化けに向いてないよ お爺ちゃんに頼んでお化けのカカシを造ってもらうからさ 一緒にここで働かないかね あんたと協力すれば日本一のカカシに成れると思うよ
(お化け)進級試験に落ちたら考えるよ さようなら カカシさん
(カカシ)どっちにしても待ってるよお化け君 さようなら

              おわり