白髪の王子様の会話ドラマ あっぱら城 ⑩ ゆったり丘での別れ

ゆったり丘での別れ
止まれ〜〜
*姫様、ゆったり丘の頂上付近にさしかかりました。ここがあっぱれ城を眺められる最後の場所となります。どうぞ降りられてご覧下さいませ。
◎銀次ありがとう。
おう、なんと素晴らしい眺めであろう。あっぱれ城がキラキラ輝いておる。友と歩いた城下町もまるで箱庭のよう・・・・・父上、母上、有難うございました。幸せになることによって恩返しとさせていただきます。・・・・・
★姫、おめでとうございます。
◎おう、お春、それにお里も源太も揃って見送りに来てくれたのか、嬉しいのう。
★銀次様からここで待つようにとの許しを得まして3人でおしゃべりしながらお待ちしておりました。
◎さようか、門出に最愛の友と会えてこんな嬉しいことはない。それに今日のお里は綺麗な服を着て見間違えるところであったぞ。
△姫のお嫁入りにまさかモンペ姿で来る訳にいかんべ。これでも姫より美人に見えないようにわざと化粧をはみ出してきたんだべさ。
□オメ〜のは化粧がはみ出してんじゃね〜、化粧から顔がはみ出してんだろ。
△このやろ〜〜
◎ハハハ、お里と源太の楽しい口喧嘩を聞くのもこれが最後となろう、寂しいのう。
ところでお春も秋には嫁ぐそうじゃな、おめでとう。
★有難うございます。生きる喜びは自ら生み出すものと姫から学びましたので、ほっこりした明るい家庭をつくりたいと思っております。
*姫様、そろそろ出立つの時刻にございます。お籠に・・・
◎銀次、粋な計らい大儀でありました。お蔭でお城も城下町も友の顔も心に焼き付けることが出来ました。さあ、明るく別れることにいたそう。
お春、お里、源太、ありがとう、さらばじゃ。
    姫様お幸せに お幸せに じゃ〜な〜

出立〜〜つ

□あ〜あ行っちまった。不思議な姫様だったな〜。まるでおとぎ話に出てきそうな姫様だった。
△ほんだな〜、おら達3人はおとぎの世界に迷い込んだのかもしれね〜だ。姫様と過ごした楽しい思い出なんか誰に話しても信じてくれやしね〜。胸の奥に大切にしまっておくだ。
★ほんに姫様の周りは何時も輝いていたように思います。
□城下町を散策した時、姫様は俺に手を繋いで歩こうと言って手を伸ばしてきた時にはびっくりしたな。あの時言われた通りに手を繋いでいたら姫様は今頃俺の女房になってたかも知れね〜な〜。
△オメ〜はつくづくバカだな〜、姫様は姫という立場はちゃんと理解しておっただ。
ただ姫様の頭の中には身分の垣根などは全くなかった。おらみて〜な百姓娘の懐にまで平気で飛び込んできたもんだ。べこの糞の臭いが抜けね〜おらの懐にだぞ。
★ほんにお城の中に閉じ込めておくにはもったいないお方どす。
●姫〜〜 姫〜〜〜
★あっ、うっかり爺殿ではありませんか、いま少し早ければ姫様とお話しが出来ましたものを。
●いやいや、私は昨夜姫ご自身から身に余る優しいお言葉を頂いた。それに先程城を出られる時にもそれはそれは美しい笑顔で私めに挨拶を・・・涙を堪えて一度は部屋に戻ったが居ても立っても居られなくなってここまで駆けつけた次第じゃ、姫のお籠を見送るだけでいい、見送るだけで・・・ああ姫が行く・・・姫が行く・・・・・
□あ〜あ、もうあんなに遠くに行っちまった。あそこの二本松を右に曲がるともう見えなく成ってしまう。行列の先頭が右に曲がった、そろそろ姫様のお籠も、あっ、お籠が曲がったところで止まった。
あっ、姫様が籠から降りて何か叫んでいる。
◎お春〜、お里〜、源太〜 ありがと〜〜う そなた達は私の宝じゃ〜〜
そこに伏しているのは爺であろ〜う 爺っ、聞こえるか〜我儘な私を育ててくれてありがと〜う、達者に暮らしておくれ〜〜、爺っ、もう一度言うぞ、ありがと〜う、 ありがとう爺っ〜〜〜
●姫っ  姫っ  姫〜〜っ   わぁ〜〜〜わぁ〜〜〜わぁ〜〜〜っ

◎銀次済まなかった、先を急ごう。
*姫様は良き家族、良き下臣、良き友に恵まれて幸せにございましたな。 
そうじゃな、これからは私が白樺城の人々を幸せに出来るよう励まねばならんのう。
*御意にございます。それではお籠に・・・
出立〜〜つ

◎さあ、これから先はいよいよ一人じゃ、巣立つ小鳥もこのような気持ちなのであろう。
おやっ?足元に投げ文か・・何時の間に・・青い竜の印はお竜ではないか。どれどれ
『ぽっちゃり姫、おめでとうございます。国境までは陰ながらこのお竜が姫をお守りいたします。くれぐれも(ちょっとだけよ〜ん)を忘れずに、ガバッはいけませぬ。   お竜』
ハハハ、お竜には礼を言う間もなかった。すまなかったのう。それにお竜には女の道も丁寧に教えてもらった。ありがとう。国境を越えればお竜ともぽっちゃり姫という名ともお別れじゃ、この文はお守りとして大切に持って参ろう。
おやっ、誰かが歌っている、あの声は銀次であろうか。
高砂や〜この浦舟に帆を上げて〜 この浦舟に帆を上げて〜
月もろともに出で汐の〜 波の淡路の島陰や〜
遠く鳴尾の沖過ぎて〜はや住の江に着きにけり〜
はや住の江に着きにけり〜
願わくば嫁ぐ姫に幸多かれ〜〜
ぽっちゃり姫に幸多かれ〜〜

                完