白髪の王子様の会話ドラマ あっぱれ城 ③ 新しい友

新しい友
●ぽっちゃり姫、今日は新しい友をお連れしました。
◎わ〜嬉しい、お父上は私との約束を守ってくれたのですね。
●さようで、姫の願いどおり城外から2名を選びました。こちらが『にっこりお春』と申しまして我が城にも出入りしております呉服問屋の娘にございます。姫より二つ程上でございます。
◇お春と申します。よろしゅうお願い申します。
◎こちらこそ、私の我儘を受けてくれて嬉しく思います。お春さんはどちらの生まれですか?
◇わては5歳まで京に住んでおりましたが6歳からは父上に連れられて諸国を回っております。もう長いこと京に帰っておりませんさかい京都弁もだいぶあやしくなっております。
◎うらやましいことです。私はこの城の外のことは何も分からないのです。そこでお父上に城外の友がほしいとお願いしていたのです。これからは気軽に尋ねてくれぬか、色々尋ねたいこともあるゆえ。
◇そうさせていただきます。このお城には父上と何度か訪れたことがありまして、遠目ながらもお姫様ともお目にかかっております。何時もみなはんやさしゅうしてくれはって、ほんまほっこりしております。
●次に控えますのは『びっくりお里』と申します。農家の娘でありまして姫より二つ程下にございます。これお里ご挨拶を。
▲お姫様、おらがお里だべ、おぎむぐれで城こさおっぺこまれてめんどかんどしたっとばい、こんじゃけつの穴もふんずまって屁も出ん、あっぱとっぱでえれーがおったばい。んだもんでおしょーしがったばい。
◎爺、通訳頼む。
●お城に来てびっくりしたと申しております。
◎それだけか?すごい勢いで話しておったが。
●はい、余分な枝葉を落としますとそんなところであります。
◎お里の故郷はどこじゃ
▲んだな〜江戸から北さむがってあごつることあごつること山やら谷やらいっぺー超えるだべ。川もザブザブアップアップごえて蛇やらムカデやら踏んずけて熊の股さ潜り抜けシシの突進をひらりとかわしながらまんだまんだあえぶだ。馬の糞やらべこの糞やらも踏んずけてあまだあえぶとでけー山がいっぺー見えるだ、そのふもとのちょこまったほっこり村がおらの生まれたとこだんべ。いま目くさぐっちょもあんべー見えるだがや。
◎爺、通訳頼む。
●北の山のふもとにある『ほっこり村』が古里だそうでございます。
◎それだけか?
●はい、余計な枝葉を落としますとそんなところで。
◎爺は枝葉を落とし過ぎではないのか。これでは話がなかなか前に進まぬではないか。そう言えばお春さんは諸国を回って来たと申されたが北国へは足を伸ばしたことはあるのですか?
◇はい、三度ばかり訪れたことありますよってお里はんの言葉も少しは分かります。
◎それは良かった。それなら爺のいい加減な通訳が無くても3人で遊べるではないか。爺、そなたは不用となったので向こうにいって草花と話すがよい。
●しからば、お邪魔虫は4〜5間離れた処に控えさせていただきます。
◎ところでお春さんは日頃どんな遊びをしているのですか。
◇お春とお呼び下さいませ。お姫様より二つお里はんとは四つ姉さんですがお里さんもお春と呼んでくれた方が気兼ねのう遊べますよってお願いします。
◎さようか、それなら二人共『お姫様』はやめて『姫』とよんでおくれ、それで良いな。
◇ありがとうございます。お尋ねの遊びですが、わてら商人の遊びも町人の遊びもあまり変わりおへん晴れた時は外で羽根つきや鬼ごっこ、石蹴りや縄跳びも盛んです。雨の日はすごろく・かるた・折り紙・福笑いなど色々です。男はんは剣術遊びや木登り・相撲など荒々しい遊びが好きなようです。
◎お里はどんな遊びをしておるのじゃ。
▲んだな〜、おらたちのあすびは男も女も別なく一緒に遊ぶだべや、じっぱり子めら集まるけんどもてーげー赤っ子をひっちょくっておるだ。んだどもみんな仲ようおもしぇ遊びこさ考えるだべ。でんばたでピョンコピョンコしてる蛙こさふんずかまえてケツの穴から筒さ突っ込むだ。んで大きいあんにゃが息ば吹き込んでお月様みてーに膨らますだ。そっから蛇がニョロッペニョロッペ出でぎだら皆で石投げたり棒でぶったたいたりしてせんべーみてーにペシャンコにするだ。ほっからべこの糞を丸めてぶつけあいもするだ。糞まみれになったら近くの池で水を掛け合いながら洗うだんべ、姫もやったらよかんべ。おらが顔に付いた糞ば洗ってやるだに。
◎お春、こんどはそなたが通訳しておくれ。
◇は、はい。お里の村では男も女も一緒に遊ぶそうです。
◎それだけか? それでは爺よりも枝葉を落としてるではないか。
◇はい、きばってお訳しようと思いましたがあまりにもえげつのうて、あんじょう訳せまへん。かんにんしておくれやす。
◎さようか、何となく凄まじい遊びの予感がしたが後でゆっくりお里に聞くとしよう。ところでお里は変わったものを身に付けておるがそれはなんと申すものじゃ。
▲これか?、これはモンペだべや、でんばたではだらぐときはこのモンペが一番だて、きれいなふぐ着てたら仕事にならんぺに、ずねーでーこんさ引っこ抜くときゃ股さおっぴろげてケツこさふんばって引っこ抜くだ、勢いあまっで尻もちさついて汚れてももじゃぐってほっとけばいいだ。しっつぁばけてもふせさすればでーじょうぶだし、駆けっこして遊ぶどきも木登りするどきも便利だんべさ。
◎慣れてきたらなんとなくお里の言葉も分かるようになってきた。私も思い切り駆けたり木登りなどもしてみたいものじゃ。
▲おらの村の祭りじゃ女も男にまじってフンドシ締めて相撲をするだ。おら男なんかに負けたことなど一度もねーだ。
◎ほうフンドシか夏は涼しくて気持ち良さそうじゃの〜う、爺ちょっと近こう、私にもフンドシを用意してくれぬか。
●とんでもありません。姫がフンドシ締めたらこの爺は腹を切らねばなりませぬ。
◎また腹切りか、何故男は良くて女は駄目なのじゃ。
●女がフンドシ締めてお尻をプリンと丸出しにしたら男どもは石にけつまずいたり木に頭をぶつけたりと仕事にならないからであります。それに昔から女のフンドシは縁起が悪いと言われております。
◎何故縁起が悪いのじゃ。
●食い込むばかりでありますから。
◎何が食い込むのじゃ。
●フンドシであります。
◎何処に食い込むのじゃ。
●何処と申されましても、そ、それはフンドシに聞いて下され。
◎どうも今日の爺の話はキレもないし締まりもないの〜、近頃爺はタラタラ漏らしておらぬか?。
●めっそうもないことです。それよりも姫、もっと品の良い話に替えていただきませんと。
◎そうであったフンドシが駄目ならモンペならよかろう。南蛮人や紅毛人の国では女も馬に乗ると父上が申しておった。乗馬用と言えば父上も母上も許してくれよう。爺、頼んだぞ。
●かしこまりました。
◎お春もお里もモンペが届いたら思い切り遊ぼう。その時はお里、そなたが大将じゃ、よいな。
▲えーべよ、おらにまかせっぺ、でんぐんねようきーつけろ、べそかくとごせやけるだにじなるかもしんねがらな。
◎えーべよお里、おめーこそすっころんでべそかくでねーぞ。
●姫、姫、てーへんだ、言葉がなまとるでねーか。
◎爺、そう言うおめーこそなまっとるでねーか。こまったもんだべや、こうなったらお春だけがたよりじゃ。お春、おめーの京都弁はでーじょうぶか?
◇へい、おらさ京都弁しっかり守ってるだに、なんもしんぺーすっことなかんべや、安心してけろけろ。
◎駄目じゃ全滅じゃ〜〜〜。