白髪の王子様の会話ドラマ あっぱれ城 ② 殿のご帰還

殿のご帰還
◇殿、お帰りなさいませ、無事お役目果たされたよしおめでとうございます。
☆ちゃっかり奥も息災の様子、なによりじゃ。
◎お父上、お帰りなさいませ。
☆おう、ぽっちゃり姫か、これは驚いた、大きくなったばかりか美しゅうなって、これでは嫁に貰いたいとの話がいつ来てもおかしくないの〜、あっぱれ あっぱれじや。
◇今日は私の紅などもさしましておめかししておりますから大人びて見えまするがまだまだ子供にございます。
◎お父上は長旅でお疲れでしょうから肩を叩いてさしあげます。
☆なんと嬉しいことを、気の変わらぬうち早速お願いするとしようかの姫。
◎♪タントン タントン タントントン 肩がお疲れ タントントン♪
☆ハッハッハッ 気持ち良いの〜、その歌は誰に教わったのじゃ。
◎肩を叩きながら私が今作った歌です。
☆これは恐れ入った、姫は頭の回転がよいの〜、誰に似たのであろうか。
◇私は昼行燈のようにボーッとしておりますゆえ殿に似たのでありましょう、やんちゃなところも。
☆ハッハッハッ やんちゃのおまけ付きか、其れもよかろう。
◎お父上、琉球国とはどんなところですか?
☆南国での、冬でも雪など降ったことがないそうだ。
◇殿は琉球国の言葉は如何程話せるのですか?
☆全く分からん、蚤の爪の先程も分からん。
◇ずいぶんと威張った頼りないお答えですが、それでは身振り手振りで手足をバタバタさせて話し合ったのですか?
☆それでは駄々っ子ではないか、どちらも通訳を従えておるし何の不自由もなく務めを果たすことができた。そのお蔭というか一年間で覚えた言葉はメンソーレとサーターアンダーギーとチュラカーギーの三つだけじゃ。
◎父上は一年も居たのにたった三つの言葉しか覚えられなかったのですか。私はたくさんの文字を覚えましたし、算術や和歌なども覚えましたのに。
☆これは参った。姫に勉学のことでお説教を受けるとはな、ハハハハ ところで姫は初めはお父上と『お』を付けて呼んでいたがいつの間にか『お』が抜けて父上になっておるぞ。
◎それはきっと肩をトントン叩いているうちに『お』がどこかに転げ落ちてしまったのでしょう。
☆ハッハッハッ その言い方はうっかり爺にそっくりではないか。
◎うっかり爺と一緒にしないで下さい。うっかり爺は一つ新しいことを覚えると今迄覚えていたことを三つ忘れてしまうそうです。本人がそう申しておりますから間違いありません。
☆ハハハ爺らしいのう。いつの世も楽しいことより悲しいことや辛いことの方が多いもの、楽しいことを一つ覚えたら二つ三つ悲しいことや辛かったことを忘れて丁度良いというものじゃ、うっかり爺はそこのところをわきまえておるのであろう。ところで姫、トントンの手が止まっておるがどうした。
◎父上、少しの間、目をつむってて下さい。早く〜。
☆やれやれ何が起こることやら・・これで良いか?
◎はい、今少しそのままで・・どっこいしょ。
☆おいおい、膝の上にちょこんと座り込んで赤子のようではないか。
◎肩たたきのお駄賃です。まだまだ一年分のおねだりが有りますから覚悟してください。
☆ハハハハ これでは暫くは嫁に行かせられないの〜、ちゃっかり奥。
◇行かせられないではなく、可愛くて行かせたくないと私の目には見えまするが。
☆ハハハ図星じゃ、こんどは奥に一本やられたわい、あっぱれ、あっぱれじゃハハハハ。
◇殿が覚えた琉球国の言葉とはどんな意味なのでしょうか。
☆メンソーレとはいらっしゃいませという挨拶の言葉でサーターアンダーギーとは菓子の名じゃ、早馬でそなた宛てに送った菓子がそのサーターアンダーギーじゃ。
◇殿のお帰りが待ち遠しくて、先程姫と頂いたところです。見かけはじゃが芋を丸ごと揚げたようでびっくりしましたが割って食べましたところ、とても甘くて美味しくいただきました。有難うございました。
☆それは良かった。三つ目のチュラカーギーとは見目麗しい若い女ごのことじゃ。
◇それではもう若くない私はババガーギーといったところでありましょうか。
☆ハハハハちゃっかり奥もうっかり爺から洒落言葉を習ってか、しかし出来は今一じゃの〜。
◇お粗末様でした。しかし殿はそのチュラカーギーとやらを5〜6人連れて来て城外の何処かに匿っているにでは?
☆何だその斜に構えた白い目は、心配に及ばん5〜6人ではなくたったの2〜3人じゃ許せハハハハ。
◇ま〜抜け抜けと、笑って誤魔化さないで下さい殿。
◎そうです、母上の言う通りハハハで誤魔化さないで下さい父上
☆やれやれ女ご二人に責められては敵わぬ。爺、うっかり爺はおらぬか。
●おん前に
☆おう、うっかり爺は相変わらず忍者のように現れるのう、ところでわしは今奥と姫から責められており形勢不利じゃ、ちとわしの味方となってくれまいか。
●それは叶わぬ相談にございまする。殿の留守の間奥方様と姫からすっかり猫じゃらしで飼い馴らされてしまいましたゆえ。
☆おいおい猫のタマもそっぽを向いておるし、四面楚歌とはこういう事か。
◎父上が長い間留守にするからです。
☆分かった、分かった暫くは遠出は控えるゆえ陣を解いてくれぬか。
◇ホホホホ 殿も降参しましたゆえ姫も爺も笑って無事のお帰りを祝うことにいたしましょう。
☆それは有り難い ハッハッハッ
フフフ ホッホッホッ シーシーシー
☆うっかり爺の歯は何本残っておる。
●三本にございます。
☆それでは口を開けて笑え、シーシーシーでは妖怪ではないか。
●しからば歯が三本しか無いゆえ、ハ ハ ハ。
☆ワッハッハッ、また爺の洒落が始まったぞ、ちゃっかり奥そなたの師匠であるうっかり爺に座布団三枚与えてやってくれ。あっぱれ あっぱれじゃ ハッハッハッ
 ホホホホ・ フフフ・ ハ ハ ハ・