白髪の王子様の会話ドラマ  時空神社シリーズ 石川五右衛門 ⑤三成の策略

⑤三成の策略
◎お主は俺様にインタビューをしに来たのではないのか それに応えて昔を思い出しながら話しておるのに横からごちゃごちゃとちょっかいを入れやがって 俺様の話が不満ならとっとと帰りやがれ〜〜
△とんでも有りません もっと話が聞きたいのです もっと早く話の先が聞きたいのです それなのに五右衛門殿の話し方はでんでん虫が古タイヤを引き摺って歩いているようで じれったくてつい横やりを入れてしまったのです
◎何だと〜〜 この俺様が古タイヤを引き摺ったでんでん虫だと〜〜 もう許せん これでも喰らえっ 
ゴツン
△フンギャッ アイタタタタッ 死ぬ〜〜 天国で死んだらおらはどこさ行くだ〜〜 
◎オメーはオーバーアクションなんだよ 小指でチョコント突いただけで天国が引っ繰り返ったような大騒ぎをするでないわ いい年しやがって
△小指だなんて 新ゴジラの小指じゃあるまいし頭が肩にめり込むような衝撃でしたよ とにかく暴力はやめて下さい 暴力は
◎今度横やりを入れやがったら肩どころか尻まで頭をめり込ませてやるからそう思え 
△そうなったら臭いインタビューになりますね
◎オメーまだ余裕が有るじゃねーか もう一発見舞ってやろうか
△いいえ窮鼠の最後っ屁であります おとなしく聞きますのでどうか話を続けて下さいませ
◎だいたい芸能レポーターって奴はデー嫌いだ 人の心の傷口に辛子を塗りたくって傷口を広げるばかりか人を不幸に落とし込んで稼ぐなんて泥棒より醜い商売じゃねーかー 
△私はその様な者ではありません 歴史のほころびを繕うためのボランティアであります どうか誤解されません様お願いします
◎今回は殴られても逃げ出さないお主の根性に免じて許してやろう 話を続けるがちょっかい入れんなよ ところでどこまで話したか忘れちまったじゃねーか
△外堀の橋を渡るところからお願いいたします
フェ〜クション お前のせいですっかり湯冷めしちまったじゃね〜か 今一度湯に入りながら話すといたそう 
△申し訳ありません どうぞどうぞお入り下さい お焦げに成るまでお入り下さい
◎何だと〜〜このやろ〜〜
△冗談です ユーモアであります 気が済むまでどうぞごゆっくりお入り下さいませ
◎お前の品の無い余計なひと言が耳障りなんだよ 白髪頭に成っても王様に成れず王子のままなのはそのせいじゃないのか
△それこそ余計なお世話のこんこんちきでございます
◎何だと〜〜こんこんちきだと〜〜
△いえいえ これも窮鼠の最後っ屁でございます
◎何度も屁をするな それでなくても加齢臭がぷんぷん漂っているではないか
△臭いインタビューで申し訳ありません どうぞ話の続きをお願いします
◎どこまで話したか忘れちまったじゃね〜か〜
△先程から何度も申し上げておりますように外堀橋を渡るところからお願いします 若しかして五右衛門殿はちょっとボケの兆候が・・・心配ですね〜〜
◎何だと〜〜もう一度言ってみろ 糞じじ〜めが〜〜 ボカッ
ウグッ・・ゴボッ 私はもう死んでいる ジョバ〜〜ッ 弔辞の代わりに話しの続きをお願いします〜〜
◎ハッ ハッ ハッ お主は変人よの〜う 変人奇人は俺様と同類じゃ 気に入った 話を続けよう
 さてどこまで話したかの〜う・・・ハッ ハッ ハッ そんなにあきれた顔をすんな 冗談だ ユーモアじゃ
△これはやられましたな〜 どうぞお願いします
◎我々と三成は外堀に掛かった橋をゆっくりと歩いて渡った ギシギシと踏み板が不気味なうめき声を漏らす 誰も無口であった やがて橋の中程まで来た時に三成が立ち止まり『これが見納めと成るやも知れぬ 今一度城を拝ませてくれ』と言って振り返り天守を見上げて手を合せた 我々も城内での日々を思い浮かべながら月に照らされた天守を見上げていた どこからかゴ〜〜ンと鐘の音が響き渡り微かに橋を揺らしたような気がした
△ムムム(我慢 我慢)
◎その時である ガガガ〜〜ッと大きな音と共に橋が傾き踏み板が抜け落ち我々は真っ逆さまに堀に投げ出されてしまったのだ
△大地震でも有ったのですか?
◎後で分かったことだが あの橋にはそういう仕掛けが隠されておったのよ 三成が立ち止まった処が正にその場所であったのだ 三成が立ち止まって振り返るのを合図に橋桁を取り払ったのであろう
城にはこういった仕掛けがあちこちにあるのを忘れた訳ではないが三成が人質で居ることで油断をしてしまった
△当然その三成も堀に落ちたのですよね
◎大きな音がして橋が傾いたとたん奴が横っ飛びに動いたのは見えたが後は分からん 橋の欄干にでも飛び付いたのであろう
△そうですか しかし五右衛門殿も仲間も泳ぎは得意の筈 いち早く石垣か橋脚に取り付いて七つ道具でよじ登ることは出来なかったのですか 一部分にしろ橋桁が落ちてるんですから城からは追手が出せない筈です
◎そこよ そこで又三成の策にまんまと引っ掛かってしまったという訳だ
石田三成という男敵ながらあっぱれな男よ
△えっ? またどんな策で・・・
◎それは湯から上がって酒でも飲みながら話すとしよう お主もそう急ぐ旅でもあるまい
△こうなったら意地でも最後までお話を伺いましょう ご相伴に預かってもよろしいでしょうか
◎ハッ ハッ ハッ 良かろう その代り歌でも一曲披露してもらおう
△それでは『鳩ポッポ』の歌でも歌いましょう どんどんいきましょう じゃんじゃんいきましょう ガンガン景気良く飲みましょう ウイ〜〜
◎飲む前からウイ〜〜はないだろ ハッ ハッ ハッ

続く