白髪の王子様の会話ドラマ  時空神社シリーズ 石川五右衛門  ②釜ゆでの秘話

②釜ゆでの秘話
◎白髪の王子とやら 其処に積んである薪をくべてくれぬか 少々ぬるかったわい
△はいはい それでは5〜6本太めの薪をくべましょう
◎すまぬ 立っている者は変人でも使えと言うからの ハッ ハッ ハッ それではそなたの核心のインタビューとやらを受けようではないか
△有難うございます それでは早速ですが五右衛門殿は何故釜ゆでの刑になったのですか?極悪人でも磔か斬首と決まっていた時代なのに
◎そんな事知るか 刑を指示した奴に聞いてくれ それがしが好んで釜ゆでを願った訳では無いぞ
△成程ごもっともで ところで釜ゆでの刑の湯加減は如何でしたでしょうか
◎お主 言葉使いには気を付けろよ 釜ゆでの刑の湯加減はどうだったかだと ぐらぐらと煮立った湯だぞ ひろみ郷のアッチッチどころの騒ぎじゃないぞ しかも普通の湯では無い 油を沸かした湯じゃ 奴らは生殺しじゃ飽き足らずに俺様をから揚げにして完全な死を見届けたかったのであろう
△そこです そこなんですよ そこまで五右衛門殿が憎まれる理由がどうしても私どもには理解できないのです 然もたかが盗人の刑に何故普通の熱湯ではなく庶民では手の届かない貴重な植物油を使ったのでしょうか たかが盗人の刑ですよ そこらの田んぼの泥水でも充分じゃないですか 
◎そなたは俺様の命よりも油のが大切みたいな言い方をするではないか 然も『たかが盗人 たかが盗人』と俺様を虫けら扱いしおって
△こ これは失礼しました つい興奮しまして 実は現代人の疑問はこの一点に集中しているのです 五右衛門殿も御承知の通り五右衛門殿の処刑の約15年程前に荒木村重の謀反により村重一族とその重臣の家族36人が処刑されたのが三条河原から目と鼻の先である六条河原であります 荒木村重織田信長重臣で秀吉や明智よりも各上の大名だったのです 五右衛門殿の処刑はそれに次ぐ大がかりな処刑と成ったわけです 何度も言いますがたかが盗人の処刑にです それだけでは有りません 五右衛門殿の処刑の僅か1年後 あの関白と成っていた豊臣英次一族お呼びその取り巻きの女集39人も五右衛門殿と同じ三条川原で処刑されました どうです五右衛門殿 大大名と関白の処刑と並び3大処刑と呼ばれてもおかしくない程の処刑者数20人を超える五右衛門殿一族及び仲間の大処刑だった訳です たかが盗人の処刑がです 誰もが不思議に思うと共にその理由を知りたくなるのもいたしかたないこととご理解いただきたいのでございます 
◎相変わらず『たかが盗人』呼ばわりしておるのお主は 
△申し訳有りません 現代人の叫びを代表しているものとご理解ください 関白英次の他にも秀吉の側近として権威を欲しいままに暗躍した石田三成も家康との合戦に敗れ同じく処刑後三条河原で晒し首と成っております
◎なんと あの青瓢箪までが三条河原で晒し首となったか 腐れ縁とはこのような事か 
△青瓢箪とか腐れ縁と言われましたがあの石田三成と逢ったことがあるんですか
◎そうさ 大阪城に忍び込んだ際我々盗人との交渉に当たったのが正しくその青瓢箪よ 戦には出ず常に大阪城内で秀吉の指示を受けていたから白拍子のように青白い顔をしておったわい
△それでは五右衛門殿が大阪城に忍び込んだという噂は本当だったんですね
◎ほう 誰がそんな噂を流したのかな
△あくまでも想像です 大阪城に忍び込んで悪さでもしない限りあのような残忍な処刑はされないだろうとの考えから出た噂であります
◎ハッ ハッ ハッ その者は知恵者じゃ 俺様たち盗人10人が城内で行った所業が外に漏れようものなら秀吉の権威は地に落ち秀吉の天下もたちまち藻屑と成るでであろうことから石田三成ほか側近達は命を懸けて我々の所業を秘密裏に葬ったのであろう 
△とうとう核心に迫りましたね どうかその所業とやらを教えて下さいませ
◎白髪の王子殿 ちと熱くなってきたが薪のくべ過ぎではないのか
△あっ 申し訳有りません 興奮して薪を山程くべてしまいました
◎おいおい お主は天国まで来て俺様を釜ゆでにするつもりか
△ものは次いででございます 大阪城内での所業を教えてくれるまではじゃんじゃん薪をくべてふいごで火を盛んに煽りましょう
◎こら〜っ それはインタビューではなく脅迫ではないか 天国の風紀を乱すつもりか〜 あっちっち あっちっち こら〜白髪の糞爺じ〜 いい加減にしろ〜〜
続く