白髪の王子様の好奇心 82 年賀状

年賀状
皆さん、もう年賀状は書きましたか?
子供の頃の宿題のように、あした またあしたと先延ばしにしていませんか。
こんな時パソコンに家族の写真を取り込んで簡単にプリントアウトできる人は本当に羨ましい限りです。
しかし初めは珍しくて羨望の目で見られていたこうした年賀状も誰もが出来るようになると、かえって今では在り来たりの年賀状となってしまいました。
そこで大切になってくるのが写真の横に書く手書きのメッセージです。文字までが印刷されたものだと単なる社交辞令のように思われて暖かさが伝わってこないのです。
『そのメッセージを考えるのが面倒くさいんだよ』とおっしゃる方も多いと思いますが、私は逆に『それを考えるのが楽しみじゃないですか』と言いたいのです。相手の顔を思い浮かべながらお正月らしい楽しい言葉をあれこれ考えるのは結構楽しいものです。
阿波踊りで歌われる歌詞のように『同じ書くなら 楽しまなくては 損損』そんなつもりで私は書いています。なにせ52円分楽しまないと元が取れませんので。
郵便局では毎年『年賀状思い出大賞』を設け、貰って嬉しかった思い出の年賀状についてのエッセイを発表しております。第6回の大賞が雑誌に掲載されておりましたので紹介します。
どんな年賀状が相手に喜ばれるか、きっと素晴らしいヒントになると思います。

第6回日本郵便賞受賞作
奥野登志子

行商をしていた母のリヤカーを引いていた犬のジョンは、とても賢い犬で家族の一員だった。
行商ができなくなった母は、知人のたっての願いでジョンを譲ることにした。
新しい飼い主の転勤が決まった。
引っ越す一週間前から、ジョンは毎朝、我が家の玄関前に座っていた。
母から朝ごはんを貰い、母にたくさん甘えて、新しい飼い主の元へ帰って行く。
連れて行くべきか悩む飼い主に、『ジョンはお別れに来ていたのですから、どうぞ、連れて行ってください』と母は言った。
翌年、沢山の年賀状の中から、犬の足型が押された年賀状を見つけた。
差出人、佐藤ジョン。
母は泣き笑いの顔で、その年賀状を胸に抱いていた。