二丁目商店街シリ−ズ 12 時の流れ

時の流れ
○ 掛け時計が故障してね 叩いても蹴飛ばしても動かなく成ったんで見にきたよ
○ そんな乱暴な 正常な時計でも蹴飛ばせば故障しますよ 時計の代わりにサッカ−ボ−ルでも
  ぶら下げたらどうですか
○ 冗談だよ そんな10時10分みたいな顔して睨まないでよ
○ 何ですかそれ
○ 時計屋を長くやってると顔まで時計に似てくるんだな 顔の真ん中に丸い鼻がちょこんと座ってて
  眉をひそめると10時10分そっくりなのさ
○ 時計を見に来たんですか それとも暇つぶしに馬鹿話しをしに来たんですか
○ ほらほらそんなに眉を吊り上げたら10時10分が11時5分に成っちまうよ 買うよ 買うけどさ
  どれを見ても華やかでゴ−ジャスなんだけどピンと来ないんだよな
○ それは時計は進化してるけどあなたが進化してないだけでしょ
○ 10時10分が気にさわったようだけどさ 今日は俺 お客さんなんだよね そこんとこよろしく
○ 昔のボンボン時計で育った人はみんな同じようなことをおっしゃいますよ
○ そうだよな チクタク チクタク ボ〜ン ボン と穏やかで親しみがあって時がゆっくりと流れてた
  ような気がするよ それに何処の家に行っても同じようなボンボン時計が有ってさ子供心にも安心感を
  覚えたもんだよ
○ 1分2分の誤差も許せない現代人にとっては無用の長物でしかないでしょうな あなたも店を息子さん
  に譲ってボケ〜っとしてると無用の長物に成りますよ
○ ちょっとマスタ− 骨身を削るような冗談言わないでさ ボンボン時計みたいに穏やかな冗談を言ってよ
  ボ〜〜ン ボ〜〜ンてさ