寸劇シリ=ズ 14 注射嫌いの医者と患者

14 注射嫌いの医者と患者

医者・どうなさいました?

患者・小指の爪と肉との間にトゲの様な物が刺さって抜けないんです だんだん痛みが激しくなりまして 我慢できずに来ました

医者・う~ん かなり奥まで刺さってますね これは痛いでしょ

患者・ええ だから来たんです 抜いて頂きたいんですが

医者・う~ん トゲの先が折れて肉の中に取り残されてますから簡単には抜けませんね 指の先は神経が集中してますから局部麻酔してから抜きましょう 麻酔の注射もかなり痛いですが我慢して下さいね

患者・せ 先生 私は注射が大の苦手でして 注射器を見ただけで気を失いそうになるんです

先生・それは良かった 馬に打つ太くて長い注射器を見せますから それを見て気を失って下さい その間に抜けば麻酔の注射はしないで済みますから

患者・もし途中で目を覚ましたらと思うと不安ですね

医者・その時は直径1メートル位の注射器を見せましょう それを見れば当分の間目を覚ますことはないでしょう

患者・先生 楽しそうですね

医者・ハハハハ 大の大人が注射を怖がってどうするんですか そんなんじゃコロナのワクチンも打てませんよ それよりこの指先の傷を放っておけば破傷風となってワクチンを打つ前にお線香のお世話になるかも知れませんよ

患者・脅かさないで下さいよ先生 とにかく注射が苦手でして どうでしょうか無痛分娩のように全身麻酔で治療できませんかね?

医者・小指の治療での全身麻酔は保険が利きませんから20万から30万の治療費が掛かりますがよろしいですか?

患者・う~ん 違う意味で気を失いますね

医者・それじゃ 一番簡単な方法で指先を切り落としましょう そうすれば指ごとトゲもとれますし歯を食い縛るだけで麻酔の注射もしないで済みますから

患者・ウッ ウッ ウッ

医者・心配いりませんよ 医者じゃなくてもヤクザが簡単にやってますから ヤクザから足を洗ったつもりですがすがしく切り落としましょう

患者・ウッ ウッ ウッ そ それは勘弁して下さい

医者・そうですか それでは麻酔の注射を打つしかないですね 観念して下さい

患者・は はい でも正直怖いんです先生

先生・私も恐いんですよ 実は私も注射を打つのが大の苦手でして 注射を打とうとすると手がガタガタ震えて手に打つつもりが頭に突き刺しそうになったりするんですよ でも今日は清水の舞台から飛び降りたつもりで目をつむって打ちますからあなたも覚悟して下さい

患者・せ 先生 無かったことにしましょう

医者・はっ??

患者・私は来るところを間違ったようです 先生はこの傷を見なかったことにして下さい 私もここに来なかったことにしますから

医者・そうですか かまいませんが初診の問診料として3千円は頂きます

患者・それも無かったことにしましょう お互いの為に 失礼します

医者・それでは『お大事に』も無かったことにします

 

おわり