５ 一攫千金
★ よう 桜井 丁度良かった ラーメンおごるから付き合わないか？
◎ ラッキーと言いたいけど後が怖いな 何か企んでないか？
★ バカ言うなよ 宝くじに当たったんだよ
◎ えっ！ えっ！ すっげ～ だったらラーメンなんてケチなこと言ってないでステーキとか寿司とか鰻重でもおごれよ
★ それじゃ予算オーバーになっちゃうよ 当たったのは３００円だから １０枚買ったら下一桁が当たったんだよ
◎ あのよ 三千円払って三百円当たったって そんなの宝くじに当たったって言わないだろ普通
★ でも売り場のおばちゃんが『三百円当たりました』とにっこり笑いながらチャリチャリチャリンと三百円よこしたんだぜ 当たりには違いないよ
◎ まあいいや それで何処のラーメン屋にする？
★ 俺の部屋に決まってるじゃないか
◎ えっ！ それって ヤカンからお湯を注いで３分間待つあのラーメンのことか？
★ そうだよ そのラーメンだよ 三百円の予算内でやっと2個ゲットしたんだ文句を言うなよ
◎ 宝くじに当たったのにかび臭い独身寮の小部屋で二人膝を揃えてカップラーメンかよ泣けるね～～
★ 一人で泣くのは寂しいからお前をさそったんだよ 涙でしょっぱくなったカップラーメンをすすりながら二人肩を組んで人生について語ろうぜ
◎ 俺 止めたわ 花の金曜日に絶望ラーメンなんか食べたくないからな せめて百万円以上当たったら誘ってくれよ
★宝くじで一攫千金を手にした人は大勢いるんだぜ それを思うとつい宝くじ売り場の前を通ると買ってしまうんだよな ジャンボを買っても結果は何時もチョンボなんだよな
◎ 若し宝くじで三億円当たったらお前どうする？
★ そうだな 先ずお前にラーメンおごるよ
◎ またラーメンかよ それからどうする？
★ 今の処思いつかないから毎晩お札を数えながらニヤニヤしてるだろうな
◎ 気味悪いな ローソクの灯りの下で 一ま～い 二ま～い なんて番町皿屋敷みたいな数え方してたら毎日寝不足で会社に遅刻するぞ
★ 三億円当たったら会社なんか辞めるよ 俺の年収は三百万そこそこだよ 定年まで約３５年として約一億円 未だ二億円残るじゃないか
◎ お前は宝くじが当たって身を亡ぼすタイプだな 三億円手にしたって田園調布に庭付きの家なんか建てられないぜ 無駄遣いして当選金の残高が少なくなると心配に成ってもっと増やそうとして怪しい相場や競馬につぎ込んだらあっという間に三億円なんかドロンと消えて借金だけが残るはめになるんだよ 定年の歳になる前にな
★ 脅かすなよ 当たる前から心配になってきたよ
◎ 当選金も三百万円位が丁度いいんだよ そしたら結婚式の時のためとか家を買う時の頭金として貯金しようと真面な考えが優先して無駄遣いの邪心を抑えることができるんだよ 毎晩ニヤニヤしながらお札を数えても三百万位だったら５分もあれば数え終わるから会社に遅刻することも無く会社を辞めなくて済むだろ だから若しお前が三億円当てたら三百万だけ受け取って後は全部俺に渡せよ それがお前の身のためというもんだ
★ バカ言え それは俺のためじゃなくて お前のためじゃないか 三億円の内俺が三百万受け取って残りの二億九千七百万をお前に渡したらお前はどうするんだよ
◎ もちろん会社を辞めて悠々自適に暮らすさ 時々はお前を呼んでカップラーメンをご馳走するよ その時は手土産なんかいらないから気軽に来なよ
★ ざけんな～～～
おわり
