白髪の王子様の会話ドラマ ドリーム ①ポチの夢

①ポチの夢
(ゴン)やあポチ 元気かい
(ポチ)オッス 休日の散歩の時間がほぼ同じだからご主人様同士も仲良く成ったみたいだな
(ゴン)あゝ 欲を言えばお前が若くて美人の雌犬だったらロマンチックな気分に成れたんだけどな〜残念
 (ポチ)それはお互い様だぜ 始めて合った時お前が遠くで片足上げてオシッコするのを見てがっかりしたもんさ
(ゴン)ハハハ ご主人様同士も色気のないドリームジャンボ宝くじの話で盛り上がってるけど君はどんな夢を持ってるんだい?
(ポチ)俺は目先の夢なんかよりも今度生まれてくる時は猫に成りたいと思うよ
(ゴン)おいおい あんな『お手』も出来ないバカな猫に成りたいなんて変わった奴だなお前は
(ポチ)だってよ 散歩の途中でよく見かける猫たちは皆んな自由に外で飛んだり跳ねたりじゃれたりして楽しそうに遊んでいるじゃないか それに比べて俺達は首輪をはめられロープで繋がれて人間様に曳かれて歩く姿はまるで奴隷みたいじゃないか
(ゴン)それは俺達犬にも責任が有るのさ 先祖のほんの一部の馬鹿犬共が人間様に噛み付いたり狂犬病などを発病させたりしたからなんだよ 今でもやたらめったら吠えまくるバカ犬がいるじゃないか だから益々危険を感じて鎖やロープで繋がれるように成っちまったということよ 忠犬ハチ公なんか渋谷駅の雑踏の中でも首輪もロープも無しでじっとご主人様を待っていたんだぜ あの頃の犬は幸せだったと思うな
(ポチ)ゴンはやけに人間様の肩を持つじゃないか
(ゴン)だってさ 俺は捨て犬で死にそこ成ってるところを今のご主人様に救われたんだ 俺にとって人間は恩人なのさ
(ポチ)ふ〜ん でもお前を捨てたのも人間だぜ
(ゴン)そう言われればそうだな でもそこまで考えてなかったよ ハハハハ
(ポチ)ゴンは犬なのに御人好しだよな ところでゴンという名前は珍しいねご主人様の名前が『権助』とか『権太』でその一文字を貰ったのかね
(ゴン)そんなんじゃないよ 俺を拾って玄関に放したら勢いよく壁に頭をゴンとぶつけたらしいんだ それで俺の名前はゴンに決定さ
(ポチ)それなら『壁ドン』でも良かったな
(ゴン)あゝ 若しその時タンスに頭をぶつけてたらきっと『タンスにゴン』と名付けられたと思うよ
(ポチ)ハハハ 俺の名前だって人間様で言えば『佐藤』とか『田中』とか『鈴木』みたいなもんでさ石を投げればポチに当たるってもんで新鮮味が無いよ ところで君の夢は何だい
(ゴン)俺の夢は今のご主人様のところで一生を送りたいと思ってるんだ
(ポチ)随分と地味な夢じゃないか 今度生まれ変われるものなら人間に成りたいとか思わないのかい?
(ゴン)人間も我々が思う程楽じゃ無いみたいだぜ 朝から晩まで汗水流して働かないと暮らしていけないようで俺のご主人様の晩酌もビールから発泡酒に代わり更に最近はロングサイズから350mlに格下げされてしょぼくれているよ
(ポチ)そうか 人間様も俺達の前では偉そうな顔してるけど結構苦労してるんだ
(ゴン)そりゃそうさ 俺達犬にまで馬鹿にされたくないもんな 特に男は『武士は食わねど高楊枝』なんて見栄っ張りなところが有るからね でも結構愚痴なんかこぼすけどね
(ポチ)そう言えば俺のご主人様も良く愚痴をこぼしてるよ 会社の上司がどうのこうの 奥さんがどうのこうのと俺の目を見てグチグチ訴えるからさ『お前男だろ何時までも愚痴ってんじゃね〜よバカ』と吠えたらさ『有難うポチ 俺の悩みを分かってくれるのはお前だけだ』と言って頭をなでなでして喜んでやんの 言葉が通じないことも悪い事ばかりじゃないね ハハハハ
(ゴン)ポチ君らしいな 君は猫になりたいと言ってたけどさ猫は猫で人間様に結構気を使ってるんだぜ 頭の回転は俺達犬には敵わないけど人間様に好かれるテクニックは我々よりぜんぜん優れているんだ おねだりする時は人間様の足に頭や体をこすり付けて『ニャ〜オ〜』と可愛らしい声で鳴くんだ それで人間様は一コロさ 俺達が尾を千切れんばかりに振ってもあれには敵わないね
(ポチ)確かにあのアイスクリームに蜂蜜をかけたような甘い声には敵わないな だけど時々気を使いすぎて失敗もしてるけどね
(ゴン)失敗って?
(ポチ)人間様にお中元とかお歳暮のつもりで自分が捕まえたネズミやヘビを届けてビックリさせてるじゃないか 空気読めね〜んだよなあいつら ヤッパ俺猫になるのはやめとくよ また犬でいいけど今度は雌に生まれ変わってゴン君を誘惑してやろうかな
(ゴン)おいおい気味悪いこと言うなよ 俺も今度生まれる時は雌になるつもりなんだから
(ポチ)何だよ それじゃ来世は二人共座ってオシッコかよ
ハハハハ ハハハハ
                おわり