白髪の王子様の好奇心 117 お局様

お局様
いよいよ『あっちっち』の夏も本番となってまいりました。
ただでさえ暑いのに頭から湯気を出して怒鳴る上司の下で働くサラリーマンの方々には心より暑中見舞を申し上げます。
私達の若い頃は職場で雷を落とすのは男の上司と決まっていたものですが、今では女性の管理職も増えて通称『お局様』の雷もしばしば落ちると聞いております。このお局様の雷に打たれると長期間に渡り体からシビレが取れないと言われております。くわばら、くわばらであります。
昔から怖いものは地震・雷・火事・親父と言われてきましたが、いつの間にか怖いものから親父の姿が消えてしまったのは皆様も御存知のとおりであります。それでは現在の怖いものは地震と雷と火事だけかと思いきや、いつの間にか親父が座っていたところに女房がどっしりと腰を下ろしているではありませんか。冗談じゃありませんよ、これは勝手に憲法を変えるようなもので解釈の問題等ではありません。我々親父族は力を合わせて女房を座布団ごと引っ繰り返してその座を奪取しなければなりません。青い目のメリケン人のレデーハーストなんぞに誤魔化されてはならんのです。敵はレデーなんかじゃないのであります。
職場ではお局様の逆鱗に触れ、我が家に帰ればもう一人のお局様の目が吊り上っていると嘆くご主人もいるそうですがご愁傷様としか言いようがありません。
このように『お局様』は嫌われ役として登場するのが常で、誉め言葉として使われる事は殆んどありません。
ところで『お局様』と言えば春日の局からきていると思いますが『春日局』はそんなに誰からも嫌われる程の鼻つまみ者だったのでしょうか。
春日局』の称号は朝廷から頂いた権威あるものです。『お局様』と呼ばれるのは皇室や公卿あるいは将軍家につかえる重要な地位にある女性に授けられる敬称なのです。東京ドームの近くに春日という地名があります。近くの地下鉄の駅名にも春日駅が二つもあります。そして地上に出れば春日通りと呼ばれる広い道路に多くの車が流れています。なんとこの辺一帯は春日局の領地だったことから現在でもその名が残っているのであります。まさしく日本女性が誇れる女性のトップリーダーなのであります。
彼女は他の女性から反感を受けるような美貌を武器にそこまでのし上がったのでしょうか、資料によりますと彼女は幼い頃疱瘡(天然痘)にかかり顔には多くのあばたが残っていたそうです。更には父親は明智光秀の重鎮でしたから城から追われて命からがら親類知人を頼って転々と隠れ住んだ苦労人でもあります。預けられたところで作法やあらゆる教養を身に付けたことにより家康の目に止まり、家光の乳母として招かれたのです。
だれでも出世するとうとまれるものですが、春日局も草葉の陰でさぞかし悔しがっていることでしょう。
彼女の偉いところは体を張って家光を将軍に押し上げたばかりではなく、朝廷と徳川家の間を取り持ち徳川幕府を盤石なものとした立役者の一人なのです。その貢献において大名も頭を下げるほどの地位に上り詰めたわけですが、やっぱり大名からすれば目の上のタンコブだったかも知れませんね。
職場で男の管理職と堂々と渡り合い、部下を体を張って守り、部下の相談事には親身になって耳を傾けて適切な助言を与える女性のリーダーこそ真の『お局様』なのであります。そんじょそこらの意地悪おばばとは次元が違うのであります。どうかこれからは称賛の意味で『お局様』の言葉を使っていただくよう白髪の王子からもお願いするところであります。
草葉の陰の春日局様、この位でよろしいでしょうか、お礼と言っては何ですが春日局様も時々はこのブログを見て笑ってやってくださいまし。



私の好きな散歩道から眺めた暑さ忘れる景色であります。