白髪の王子様の好奇心 120 笑顔

笑顔
神様は何故人間だけに笑顔を授けたのでしょうか。地球に住む全ての生き物に笑顔を与えてくれたらどんなにか素晴らしい世界となったことでしょう。
小学生の頃そんな文部省推薦のような考えを抱いたことがあります。
しかし今改めて考えてみますと、この幼い頃の夢が叶ったとしたら色々と不都合なことが生じてきます。
例えば新鮮な魚を刺身にしようと包丁を構えたところ、その魚がまな板の上で可愛らしくニコッと笑ったらどうでしょうか、勇ましいシェフでも手が震えてさばけなくなってしまいますよね。牛や豚も同じであります。ましてや大根や人参までもが愛らしくニコニコ笑ったら人間は何も食べられなくなって餓死してしまいます。言葉も同じです。リンゴやミカンの皮をむくたびに『イテテ・イテテ』なんて叫ばれたら前歯でガブッとかじることなんかとてもできません。万物の平等はとても難しいものです。
残念ながらこの地球は弱肉強食の世界であります。その世界で生き抜くためには笑顔とか共通語はタブーなのです。だからこそ動物は後悔することなく獲物を捕らえて食することができるのです。その点は人間も同じであります。
花や動物が笑顔で会話するメルヘンの世界は笑顔を授かった心優しい人間だけが空想できる夢の世界なのであります。
互いに協力し合って豊かな社会を築こうとする人間にとって笑顔は欠かすことの出来ないスマホよりも大切なものです。
現在ではその笑顔を象徴する『笑い』も色々と進化してきました。思い付くままにその笑いを列挙してみましょう。
『バカ笑い』・・ところ構わずガハハと笑うKYの笑い
『おせじ笑い』・・上司の下手な駄洒落にも手を叩いて笑うゴマスリ笑い
『照れ笑い』・・なんとなく照れくさくなって笑ってしまう恥ずかしがり屋の笑い
『苦笑い』・・不快でありながらも笑う後味の悪い笑い
『忍び笑い』・・他人にきずかれないように声を殺して笑う
『作り笑い』・・おかしくもないのに無理やり顔の筋肉を動かして作る笑顔
『含み笑い』・・口を閉じて声を出さずに笑う
調べればまだまだ沢山の笑いが有りそうですがこのくらいにしておきましょう。古稀を過ぎた私はあらゆる笑いを駆使して生き延びてきたように思います。調子よく生きる為にも笑いは必要なのであります。
このような素晴らしい笑顔も外人さんには中々理解されないようです。特に『照れ笑い』に関しては日本人特有の笑顔のようです。
台風や豪雨あるいは突風などで大きな被害を受けた農家をテレビ局の人がインタビューすると『見ての通り全滅ですわハハハ』と笑う親父さん。もう一軒尋ねると『もう生きる希望もなくなりましたわハハハハ』と笑う腰の曲がったおばちゃん。日本語が分からない外人さんがこのニュースを見ると何か特別に嬉しいことがあったのかと思うそうです。
何故多くの日本人はカメラやマイクを向けられると無意識に笑顔を見せてしまうのでしょうか。他人様に不機嫌な顔を見せたくないというご先祖さまから受け継いだDNAがそうさせるのでしょうか。正直言って白髪の王子も理解に苦しむところであります。
笑い方も人によって様々です。膝を叩いたりテーブルを叩いたりと騒々しく笑う人、クックックッと鳩の親戚のように笑う人、コロコロコロとお箸を転がしたように笑う人、息を吸いながらヒーッと笑う人、うつむいて泣いているのか笑っているのか肩を震わせて笑う人、そうかと思うと他人の身体を勝手に叩いて笑う迷惑な人、まさしく十人十色であります。
どんな笑い方であれ『笑う門には福来る』と申します。この福も神様が人間だけに与えてくれた宝物でありますから大いに笑って福を呼び込みましょう。ハハハハ ハハハハ 皆さんこの白髪の王子様の好奇心も今回で終了です。ワッハッハッ ワッハッハッ 。



入間川をちょっとさかのぼると狭山市です。素敵な散歩道が手招きしております。