白髪の王子様の好奇心 115 風


台風一過、どうやら今日明日にも関東地方は梅雨明けとなりそうです。
しかしアスファルトやコンクリートに囲まれた都会人はジメジメした空気にギンギンギラギラの太陽が照りつけるとオール蒸しパン状態になります。
こんな時、ビルの間から涼しい風でも吹いてくれればほっとするのですが、ムーッとした照り返しの熱風では不快指数も上がる一方であります。
こういう時こそ先人の知恵を見習おうと地域の人々が声を掛けあい打水を始めるところが増えてきているそうです。
水を撒くことによって厳しい照り返しを和らげるばかりではなく、ゴミが散らかっていれば片付けることにもなりますしミニ井戸端会議にも繋がり地域のコミュニケーションにも効果が期待されます。
風は温度の低い方から高い方に流れますから、無風状態でも打水をすることによって微風が生まれるそうです。クーラーも扇風機もなかった時代の先人の知恵であります。
しかしクーラーに首までどっぷり浸かり、風流なんぞは蹴飛ばしてちょこまか歩く若者には打水の微妙な温度の変化ぐらいでは満足できないようです。ところが信号待ちの僅かな時間でさえ忍者のごとく電信柱の細い影にピタッと身を隠すのであります。
そんな若者達のために電車の中や店舗の中はギンギンに冷やされております。このクーラーが作り出す機械的な冷風で殆んどのお年寄りがやられてしまうのであります。私もその部類でありますから外出する際には必ず長袖のシャツやチョッキ、あるいはジャケットを手に持って出かけます。そうでないと目的地に着く前に電車の中で凍死しかねないのであります。何事においてもそうですが、全ての人を満足させる涼風を生み出すのは難しいようです。お年寄りはたった一枚重ね着すれば若者と涼しさを共有できますのでクーラーを睨みつけたりしないようにしましょう。ただでさえ年をとると人相が悪くなるのですから。
エネルギッシュに社会を動かしているサラリーマン社会にも様々な風が吹いています。5月病を乗り越えた新入社員もまだまだ社風という風に馴染めない人もいると思います。そうです社会の風は夏でも冷たいのであります。先輩風を吹かせる奴、派閥風を自慢する奴、風見鶏のようにずるい奴、そうかと思えば何を言っても柳に風の上司という具合にどうも健康によくない風が多いようであります。しかし『石の上にも3年』とは良く言ったもので色々な風を乗り越えて3年も経つと『俺がこの会社に新風を吹き込んでやる』等といっちょまえに生意気な発言をするようになるのです。子供だけではありません、サラリーマンもちょっと生意気位が丁度いいのであります。
憧れの管理職になっても下からの突き上げと上からの圧力でペッタンコに潰れそうになるのが中間管理職であります。中間管理職に吹く風は髪の毛がチリチリになる位に熱かたり唇が紫色に凍る程冷たかったりと心臓に良くない風が多いようです。
先人達は風を乗り切るもう一つの知恵を残してくれました。それは向かい風でも前に進むことのできる帆を考案したことです。ヨットマンはそのお蔭で今頃大海原をスイスイと斜め前後に風を切って走っていることでしょう。
風は空気が移動することによって生まれます。移動した後には新しい空気が流れ込んできます。その風に乗って部長や重役に昇進してもやっぱりそこにも厳しい風が吹いているのです。どうやら順風満帆の左団扇はリタイアするまでお預けのようであります。それも奥さんの風次第でありますが。



今朝4時20分頃の朝焼けです。台風が散らかした雲がバラバラに染まっています。