白髪の王子様の見聞録 ほっこりアイランド

㉕台風接近

★ブー太郎 大分風が強くなってきてヒューヒュー唸り声をあげてるけど此処は大丈夫かね

(ブ) この避難所は天然の洞窟を改装したものですからどんな強い風が吹いてもびくともしません ご安心下さい

(珍) ブー太郎君 時々波のしぶきが飛び込んで来るけど此処が波に呑み込まれることはないだろうね

(ブ) 此処は海面から10メートル以上高いところに有りますし直接波は受けませんので大丈夫ですが岩にぶつかったしぶきは台風が近づけば風に運ばれてもっと多く飛び込んで来ると思います

(珍) どうせなら 波のしぶきと一緒にサンマやアジの開きなんか飛び込んで来ると助かるんだけどな~

★私はカレイの煮つけがいいですね

(珍) この海は温泉じゃないから煮つけは無理でしょう

★貴殿が言ったアジの開きよりは可能性が高いと思うんですけど

(珍) ハハハハ この分だと波のしづくが酒であればとエスカレートしそうですな

★我々は食の不安からちょっと理性を失いつつあるようですな 先ずは頭から食欲の鬼を追い払いましょう

(珍) 成程 しかし食欲の鬼を追い払うと残るはお色気の鬼だけとなりますが

★この鬼とだけは一生の友として肩を組んで仲良くしたいものです

(珍) ハハハハ 男も女も一生人間味のある色気は失いたくないものですな ところで若し波のしぶきと共にとびきり美人の人魚が飛び込んで来たらどうします?

★その時には私は上半身を頂きますので貴殿は下半身をどうぞお好きなように

(珍) ちょとちょっと お好きなようにと言われても人魚の下半身は硬い鱗で包まれていてちょとでも触ろうものなら尾ひれでピンタを食らいますから遠慮しますよ

★ピンタ位で諦めては勿体ないですよ 昔から『いやよいやよも好きの内』と言うじゃないですか 

(ブ) ちょっとちょっとお二人さん バカ言ってる場合じゃないですよ 海面が異常に盛り上がってきて若しかしたらこの洞窟も危ないかも知れません

(珍) ちょっとちょっとブー太郎君 さっき大丈夫だと言ったばかりじゃないか

(ブ) だって~~・・・ 

(珍) そうだ携帯ロボの夢ちゃんに台風状況を調べてもらおう

『夢ちゃん 夢ちゃん 急で申し訳ないけど台風について教えてくれないか』

(夢) はい 台風とは海から供給される大量の水蒸気が上昇しながら空気と混ざり合って渦巻となった熱帯低気圧のことで風速が17.2メートル以上のものを言います

(珍) 夢ちゃん夢ちゃん 聞きたいのは台風の意味じゃなくて今此処に迫っている台風15号の状況について知りたいんだ 気象庁にコンタクトして教えてくれないか

(夢) お知らせします 気象庁は台風が接近してきたため安全のため本日はもう閉店となりました

(珍) ちょっとちょっと こんな時こそ気象庁消防団の人達と同じように徹夜してでも頑張るべきじゃないか 八百屋や魚屋じゃあるまいしさっさと閉店するなんておかしいじゃないか!どこの気象庁だそこは

(夢) 私に怒らないで下さい ほっこりアイランドの気象庁は今年92歳になる八百屋のトメさんなんですから それに私の本職は健康診断を司るナースなんですから管轄外の仕事で私を呼び出さないで下さい 私もこれで閉店します ガラガラピッシャン

(珍) 夢ちゃんがヘソを曲げちゃったよ ロボットも人間も女は扱いにくいですな白髪の王子殿

★それはもう万国共通の難題でして ですから大型の台風には女性の名が付けられるんでしょうね

(珍) 成程 台風と女のヒステリーはじっと我慢して治まるのを待つしかありませんな

★その通りであります だから男の歯は我慢我慢でボロボロになって女より先にポックリあの世に旅立つてしまうのです くわばら くわばら

(珍) 恐ろしいことで くわばら くわばら

   つづく