③虫おたく
●翔太 今何か隠したでしょ 見せなさい
☆見ない方がいいよ
●親に隠し事する気かい いいから見せなさい
☆分かったよ 『ほらっ』
●『ひえ〜〜っ』 な なんなのその虫は そんなもの家に持ち込むんじゃないよ
☆ダンゴ虫だよ 知ってるでしょ ちょろちょろ動いてかわいいじゃん
●彼女に振られて今度はダンゴ虫が好きになったのかね そんな彼女許しませんよ
☆このダンゴ虫今脱皮してるところなんだよ ミミズは腹巻みたいな卵を頭から脱ぎ落とすけどダンゴ虫は体の半分づつズボンを脱ぐように脱皮するんだ 面白いからちょっと見て御覧よ
●冗談じゃないよ ようやくミミズが終わってほっとしてたとこなのに今度はダンゴ虫かい もっとさわやかですがすがしい趣味を持っておくれよ おまえに翔太という名を付けたのは大空を羽ばたくようなたくましい男の子に育ってほしいとの願いから名付けたんだよ それなのにモグラのように土をほじくってはミミズやダンゴ虫と遊ぶなんて『もぐ太』って名にすれば良かったよ
☆そんなにみそくそに言わなくてもいいじゃん
●上を見上げて御覧よ 青い空に白い雲がぽっかり浮かんでいてその横を真っ黒なツバメがジェット機の様に横切って行く ロマンを感じるじゃないか それに比べてミミズやダンゴ虫を探して下ばかり見て歩いてると電信柱に頭をぶつけて怪我するよそのうち
☆上向いて歩いていたってマンホールに落ちるかも知れないじゃん
●口答えするようになってお前は反抗期かねまったく お父さん 新聞を読んでるふりしてないで何とか言って下さいよ
■二人共甘いな 上と下ばかり見て道路を渡ったら車に跳ねられるぞ ちゃんと左右を確認して手を上げて渡らないと
●『お父さん』・・・
■何だねその尖った目は 目は丸い方のがいいぞ ドラえもんのような丸い目が世の中を明るくするんだ
☆お父さん このダンゴ虫もこうして触れるとドラえもんの目のように丸くなるんだよ
■よ〜し 飼うことを許す
☆やった〜
●私は許しませんよ 若しどうしても家の中で飼うなら私が出て行きますからね
■おい翔太 お前はお母さんとダンゴ虫とどっちが大事かね ダンゴ虫はご飯をつくってくれないぞ
☆う〜〜ん 難しい質問だな〜〜〜
つづく
