白髪の王子様の好奇心 97 スリッパの文明開化

スリッパの文明開化
日本の病院の多くは土足禁止でスリッパに履き替えて中に入ります。
患者さんも特別な事情が無い限りスリッパを履きます。
病院程スリッパが似合う施設は他に見当たりません。
診察待ちの私達の前をゆっくりと歩く患者さんの足元をなにげなく見つめていた私は、ふと、このスリッパは日本で発明されたに違いないと思ったのです。
人間暇だと、どうでもいいことに好奇心を燃やします。
しかしスリッパの語源はどうやら英語のスリップからきているようです。
確かに患者さんは足を滑らすようにゆっくり歩いています。ペタペタ音をたてて歩くのは忙しそうに病室を移動する医師と看護師さんぐらいなもんです。
スリッパの歴史はそんなに古くはないようです。織田信長徳川家康が城内でスリッパを履いていたという話は聞いたことありません。
そうするとやっぱり黒船来航以来、欧米諸国から伝わったものなのでしょうか。
私が健康寿命の崖っぷちにいることを知ってか知らずか、ちょっとした消毒だけなのに半日も病院に捧げてしまいました。しかもスリッパの宿題まで持たされて。
帰宅し、納戸兼書斎兼寝室で調べたところ、発明者の名前までも知ることができました。もちろん日本人であります。別の資料でも同じ名前が載っていましたので間違いないでしょう。
文明開化により、外国から様々な文明が流れ込んで来ました。その波に乗って外国人もわんさか日本にやって来たのです。ところが彼等は土足民族の野蛮人です。日本の家屋の中まで土足で上がり込み、畳の座敷まで泥のついた靴で汚してしまうのです。
あちこちで靴を脱げ、脱がないのトラブルが頻発したことから頭のいい日本人が靴を履いたまま靴の底をすっぽり包み込む上履きを考案したのです。それがスリッパの誕生秘話であります。
そんなことから裸足で家に上がる習慣が身に付いてる我々庶民は昭和になってもスリッパのスの字も知らないで過ごしたのです。家の中どころか子供は外でもアベベに負けず劣らず裸足で駈けずり回っていました。歴代の総理大臣に名を連ねる岸 信介氏も国会の赤いジュータンの上をハダシで歩いた話は有名ですが、これは素足のハダシではなく、歯出し、つまり出っ歯を出して歩いたというジョークです。
タレントの明石やさんまが赤いジュータンの上を歩く姿を想像していただければいいかと思います。
さて、発明したのは日本人なのに何故スリッパと命名したかと言いますと、文明開化真っ盛りの時代です。名前もモダンなネーミングがいいのではと英語を用いたようです。
その名が日本人にもすんなり浸透したのは日本人もスリッパの底のように凹凸がなく平ぺったい顔をしているところから親近感を覚えたのでしょう。
左右どちらの足でも履ける上履きは日本人が考案したスリッパだけだそうです。蚊取り線香の渦巻と同じように世界に誇れる発明なのです。時々はスリッパの裏を自分の顔だと思って綺麗にしましょう。

ところで、女性の下着のスリップの語源もスリップの滑るからきているそうです。
滑りやすい素材でできているのでその上から上着を着たり脱いだりするのにとても楽なんだそうです。
スリッパとスリップが親戚だったなんて何故だかわくわくしますね。
『そこの伯父さん、何か質問ですか?』
『ストリップも滑るように下着を脱ぐから語源は同じスリップではないか』との質問ですね。
あなたも好きですね・・・・・自分で調べなさい。




春の空も女心と同じです。さっきまで青空だったのにあっと言う間に地球最後の日が来た様です。