白髪の王子様の好奇心 98 ストップウオッチ

ストップウオッチ
3月15日、競歩の20キロレースで鈴木選手が男子陸上のオリンピック種目では50年ぶりとなる世界記録を出しました。各紙1面トップで報じましたので記憶に新しいかと思います。
ただマラソンや100メートル等の花形競技でないことから今一盛り上がりに欠けた気がします。しかし70億人に達した世界人口の中で種目別とはいえトップに立ったことは大変な快挙なのであります。
ところでこの記録はストップウオッチで計測したものでしょうか、それとも100メートル走と同じように100分の1秒あるいは1000分の1秒まで表示できる電子計時によって計測されたものでしょうか皆さんはご存知でしょうか。電子計時が登場しても暫くの間はストップウオッチを使用するか電子タイムを採用するかは各競技団体に任されていました。しかしストップウオッチは人によって誤差が生じることから我が日本では1993年以降電子計時のみを公認記録としているそうです。
世界の主な大会からストップウオッチは静かに姿を消したのであります。
私の記憶ではスポーツで電光掲示板にタイムが掲示されるのを見たのは50年前の東京オリンピックからであります。まんまるの時計表示ではなく数字だけのデジタル表示を見てかなりのショックを覚えました。それが初めてのデジタルショックで、その後も携帯電話、電卓、テレビ、パソコン、スマホ等といまだにデジタルショックに悩まされております。
あの私にショックを与えた電光掲示板は形を変えて電卓として机の横に置かれています。今ではコンビニで千円以下で買えるのです。あのショックが千円の価値もないなんてダブルショックであります。
30年程前、初めて買った電卓はCD位の大きさで計算されて表示された数字が正しいかそろばんで確認したことを覚えています。その電卓を不思議そうに見つめていた私はある発見をし、新たにショックを覚えたのです。皆さんは0から9までの数字はどのよにして表示されているか御存知ですか?
なんと数字の全ては8の字の一部分を消滅させることによって表示されているのです。
これは7セグメントディスプレイと言って数字の8の字を縦4横3の合計7に区分して、ある部分を点滅させることによって全ての数字を表示するように出来ているのです。私がそれを知ったのは偶然で、電卓の操作を誤ったことから10桁全ての桁で8の字が点滅したことからでした。失敗は発明の母ですね、しかし発明したのは外国のお偉い方で1908年には特許申請がなされたようです。
私はロケットの打ち上げには人一倍興奮します。爆音と白煙をのこし、オレンジ色の光と共に空に向かって飛んで行く姿は何度見ても初恋のように胸がドキドキするのです。
そんなロケットの打ち上げで初めて知ったのがカウントダウンの秒読みでした。ストップウオッチの秒読みは全て0からのスタートだと思っていた私は8・7・6・5と0に向かってストップウオッチを押すこともあるのだと妙に感心したものです。旧ソ連アメリカの宇宙ロケット打ち上げ競争のお蔭で度々このカウントダウンの秒読みを聞くようになってから、それを真似てお正月を迎えるカウントダウンが始まったと私は思っております。
考えてみれば、私も出産予定日まであと何ヶ月、あと何日とカウントダウンされて生まれてきたのでしょう。そして生まれたとたんストップウオッチはプラスに変わり時間は日に、日は月に、月は年へと積み重なってこんなお爺ちゃんになったのであります。そしてプラスである筈の秒読みも考えてみれば残りの人生のカウントダウンでもあります。
ストップウオッチを恨んでなんかいませんよ、私は今の年が一番気に入っております。若い時代に戻りたいなんて思ったことなど一度もありません。鼓動にも似たストップウオッチの一秒ごとの刻みを友としてもっともっと楽しい日々を送りたいと思っています。たとえ残りの人生が0になっても、今度はまた1回忌3回忌13回忌とプラスされるのですからなんの心配もないじゃありませんか。



今日は春分の日、真東から昇った太陽が先程真西に沈む寸前を撮影しました。明日からは夜より昼のが長く成り桜の花も一斉に咲き始めます。