さんま苦いかしょっぱいか
今年もさんまのシーズンがやって来た。
今では冷凍技術が進んで一年中食べられるがやはり旬のさんまは格別である。
女房に言わせると旬のさんまは肌の艶が違う、焼く時のジューという音が違う、
脂のしたたりが違う、ただよう香りが違う等とさんま博士のような事を言ってくる。
ビールを飲みながらさんまが焼き上がるのを待っている私に向かって『あなた
さんま焼けたけど一匹そのままお皿に乗せる?それとも半分に切る?』と聞いてきた。
以前私が一匹そのままド〜ンとテーブルに乗せて食べたいと言ったのでさんま専用の
細長いお皿は買ってあるのだが2〜3度使って満足したのか最近では殆んど御無沙汰
している。理由は只一つ、結構食べずらいのである。さんまは長いものでは40センチ
を超える。狭いテーブルからはみ出さんばかりである。頭の方から食べだして尾の方に
行くまでに何度も皿を箸の届きやすい位置に移動しなくてはならないのである。
其の度に味噌汁や他のおかずを上下左右に動かしてさんま様に席を譲る訳だが、他の
おかずから白い眼で睨まれているようで辛いのである。
それに片面を食べ終わって裏返すのがこれまた一苦労なのである。下手にやると細い
皿から落としそうになり油がテーブルの上にこぼれてしまい、これ又白い眼で睨まれる
のである。できれば私が頭の部分を掴み女房が腹をそして息子には尾を持ってもらい
『せーの』の掛け声で裏返したいのだがそんな事を頼めば息子からも白い目で睨まれて
しまいそうで最近はもっぱら半分に切ってもらい普通の丸いお皿に盛ってもらっている。
魚には沢山の種類が有るのに何でさんまだけが特別にニュースになるのだろうと若者は
思っているに違いない。詳しい話はお爺ちゃんお婆ちゃんに聞くといい。
さんまとコロッケは歌になる程庶民にとっては懐かしく忘れられない食卓の古里なので
ある。
ところでさんまは日本語なのだろうか外来語なのだろうか?外来語であるならサンマと
仮名で書くべきだが日本の近海でも捕れるのだからさんまでいいと思っている。
漢字では秋刀魚と書くが素晴らしい当て字である。まさしく青白く輝く白刃のようで
身を引き締めていただくことにする。
『いただきま〜す さんまさん』