白髪の王子様の好奇心 43 混雑と渋滞

混雑と渋滞
社用でドライバーの横にお邪魔虫のように座った私は関越道から若葉と青空が映える初夏の景色を眺めていました。
そんな時電光掲示板に『混雑』という表示を見付け、(混みそうですかね?)とドライバーの顔を覗くと(外環道の手前なのか奥なのか)・・・で会話が切れた。つまり私達は関越道から外環道を左折するので混雑が外環道を過ぎてからであれば影響ないということである。
だいたいドライバーは無口である。しかも今日のドライバーは課長さんなのである。
パートの私が課長さんに運転させて(いい天気ですね〜)等と呑気なことを言って景色を眺めているのである。
パートの利点は相手が部長であろうと社長であろうと気楽に話せることですね。なにせ古稀を前にした私から見ればみんな20も30も若い息子のようなもんなのですから。
それに部長や社長に気に入られたって時給の1円もアップしないのですから。
『混雑』の表示から30分程走った所で今度は『渋滞』の表示に変わり、具体的な方向と通過時間が示されていました。
そこで私は単純な疑問を感じてドライバーに(混雑と渋滞とはどう違うんですかね?)
と尋ねた。
『・・・・』今度は音が漏れてこない。
ここで私が黙ったらお邪魔虫の名がすたるというものである。(混雑は信号2〜3回待ち位の混み具合で渋滞はトイレが気に成る位の混雑ですかね?)と強引に返答を迫る。
(そうかもしれませんね)と意外と明るい声が返って来た。ほっとしたが良く考えてみたら高速道には信号など無いのであった。
そんな馬鹿な話から渋滞という言葉は道路状況以外に使われることが有るのだろうかという高度な話題に発展したが二人とも道路状況以外に聞いた記憶がないということで一致し、目出度く共同声明の発表に至った。
帰宅後、パソコンで調べてみると、警視庁による渋滞の定義は一般道であれば走行速度が20キロ以下、高速道であれば40キロ以下が目安となっているそうです。ちなみに日本での渋滞記録は滋賀県と愛知県にまたがってのゲリラ豪雪によって延長154キロの渋滞となったそうです。
辞書で調べてみても『渋滞』の解説はこうした道路状況以外には書かれていません。それなのに何で私が納得出来ないかというと、渋滞の渋という字も滞という字も、さんずいだからです。きっと昔は水に関係していたに違いないと思ったからです。
そこで埃をかぶった字源辞典を引っ張り出して『渋』を調べたら、なめらかに通らないこと、水がとどこおって流れないこと、と書かれてあった。やっぱりである。確かに渋という字を改めて見てみると、さんずいに止まるという字から出来ています。
そして『渋る』という言葉は便秘にも使われたようで、渋滞とは便秘のようにふん詰まりになることからきているのかも知れませんね。滞という字も同じく水の流れがとどこおることを表わしており、同じ意味の字を重ねることによってより強いインパクトを与えているようです。
それから推測すると『混雑』とは時々はお通じは有るものの、まだスッキリしない途切れ途切れの金魚のフンのような状態のことであるとの結論に至りました。
この研究結果を課長に報告すべきかどうか今、真剣に検討中であります。