フレ〜フレ〜営業マンシリ−ズ 17 夢を売る

夢を売る
◎御免下さ〜い 佐島さ〜ん
○はいはい どなたさんですか?
◎お早う御座います グロ−バル バカンスの鈴木と申します
○へっ? ゴロゴロバッカン?・・・ 雷でも落ちたのかね
◎いえいえグロ−バル バカンスと言う旅行会社からのお知らせで伺いました
○あんた発音が悪いね 何度聞いてもゴロゴロバッカンとしか聞こえないよ
◎はあ 申し訳有りません 先日源三郎様に資料を送らせて頂きましたがご主人様は
いらっしゃいますでしょうか
○私だよ
◎えっ?奥さん 奥さんが源三郎さんですか?
○あんた 私が源三郎に見えるかい 主人は3年前に亡くなって私一人だよ
◎し 失礼しました ガレ−ジに外車のスポ−ツカ−が有りましたのでご主人か息子さんが
いらっしゃるのかと思いました
○あれは私の車だよ
◎はっ? 左ハンドルですよ 冗談ですよね
○あんた見かけで判断しちゃ駄目だよ こんな婆さんが外車のスポ−ツカ−を運転出来る訳
無いと思ってるんだね 何なら町内をドライブしてあげようかね 片手ハンドルで
◎いえいえ結構です 正直驚きました
○私は10年前まで車のトップセ−ルスだったんだよ 議員とか財界のトップに合う時は何時も
あの車を乗り付けて商談したもんだよ 
◎へ〜 あの真っ赤なスポ−ツカ−に乗って商談ですか
○あんた 高級な車を売ると言うことはちょっと贅沢な夢を売ると言うことだよ それにはそれに
ふさわしいスタイルで行かないとねお客様が描いていた夢がしぼんでしまうでしょ
◎はあ
○はあ じゃないわよ旅行だって楽しい夢を売ることに関しては同じだよ それなのにあんた
その恰好はゴムひもか便所のタワシでも売るみたいじゃないの 然も中古の自転車をギ−コギ−コこいで
『こんちわ〜』じゃ夢は売れないね 白馬にでも乗って颯爽と登場しなさいよ
◎そ それはちょっと
○それなら あんた人が良さそうだからこのスポ−ツカ−を譲ってあげようかね この車を横付けして
営業してごらん お客様の夢を大きく広げるのがあなたの仕事でしょうに
◎はあ でも・・ちょっと・・・
○一千万以上した車だけどあんたなら300万でいいわよ どう? 今手付金として30万もあればいいわ
◎ささ 30万円で・・今財布の中には3千円しか・・・
○あんた大の男が財布の中に2〜30万のお金が無くて大きな仕事が出来る訳ないでしょ
◎そんな大金財布に入れたら財布がビックリして卒倒しますね
○あんた人に夢を売る前に自分の夢を先にかなえることを考えた方がいいみたい
◎どうもお邪魔しました 30万円貯めたらまた伺います ありがとうございました はい
○あらあら あの人何しに来たやら まだまだだねあの人も チャリンコが良く似合ってるもの