白髪の王子様の会話ドラマ  必殺ポックリ寺  ②一番目の客

一番目の客
◎住職 どうやらネットを見たお客様が来られたようです 私が出ますから住職は偉そうにお経でもあげてて下さい 鼻毛なんか抜いてちゃ駄目ですよ
●うるさいな君は 早く行きなさい
★ごめんくださ〜い どなたかおりませんか〜〜
◎はいはいはい 大変お待たせしました どのようなご用件でしょうか
★あの〜〜 必殺ポックリ寺はこちらでいいんでしょうかブログを見てお願いに来たんですが
◎はいはいこちらで結構ですよ お爺ちゃんのお使いですか それともお婆ちゃんかな
★いえ 僕です 僕自身ポックリあの世に逝きたく成ってお願いに来たんです
◎えっ? 君はまだ中学生位にしか見えないが中身は老人なのかな
★いえ 中1です 中身も同じです 学校で毎日のようにいじめを受けて家に帰っても携帯にウザイとか死ねとか書かれてもう生きてるのが嫌になって・・・だけど自殺する勇気もなくて悩んでいたんですがブログでここのお寺のことを知りお願いに来たんです
◎それはそれは大変だったね ところで君は何処から来たのかな
★東京です
◎おやおや花の東京からこんな人里離れた枯葉に埋もれた山寺まで良く来てくれましたね 立ったままでは落ち着いて話も出来ませんので上がって下さい 疲れたでしょう
★あの〜 これしか有りませんがよろしいでしょうか
◎おや万札が2枚 こんな大金どうしたのかな
★お年玉や小遣いを貯めたもので盗んだんじゃありません
◎そうですか それは良かった 内容によって頂く料金も違ってきますがポックリ料金にも学割がありますので先ずはお話をお聞きしましょう この座布団に座って待っててくれないか 今お茶を入れるから
★すみません・・・
◎はいはいお待たせしました 坊さんの入れたお茶も中々なもんだよ おやっ正座なんかしちゃって大丈夫かな
★5分位なら
◎ハッ ハッ ハッ しびれたら遠慮なく足を伸ばしなさい ところで君は死ぬとしたらどんな死に方をしたいのかな
★どんな死に方と聞かれても分かりません ブログでは苦しまずにポックリ逝けると書いてあったのでそれならどんな方法でも構いません
◎ふ〜〜ん成程 君の命は2万円か そんなに安い値段で自分の命を売ってもいいのかな 2万円じゃろくな掃除機も洗濯機も買えないよ 君の価値はそんなもんなのかな
★掃除機や洗濯機は毎日お母さんの約に立っています 僕は何の役にも立ってないし迷惑ばかり掛けているから僕の価値なんて掃除機や洗濯機以下です
◎ほ〜う これは参った 君と禅問答やっても負けそうだな しかし2万円だと学割を効かせたとしても首をノコギリでギコギコ切るしかないな
★ちょっ ちょっと待ってください それじゃポックリじゃなくて地獄の苦しみじゃないですか
◎君はテレビドラマの必殺仕事人の様に一瞬のうちにバサッと命を奪ってくれると思って来たのかな
★はい ここはお寺だから杖の中から刀を出してバサッと・・・
◎ハッ ハッ ハッ それは必殺仕事人じゃなくて座頭市じゃないか どちらにしても今の時代にそんな事したら殺人罪ですぐに捕まって死刑になってしまうよ 私だって2万円で死刑になりたくないよ
★だけど今ノコギリで首を切ると言ったじゃないですか それも殺人じゃないですか
◎誰が私がやると言いました 自分でギコギコ切っていただきます
★それじゃ自殺じゃないですか 自殺出来ないから此処に来たんです いくら出せばポックリ逝かせてくれるんですか
◎君の名前を未だ聞いて無かったね
★中村です
◎中村君このポックリ寺は阿弥陀様を祭るお寺です 煩悩を断ち悩みや苦しみから人を救う手助けをするのが私達坊主の仕事です しかし人の悩みは千差万別 苦しさに耐え悲しみを堪え生きて生きて生き抜いてここまで頑張ればもう自ら命を絶っても神様も許してくれるだろうと思われる方のみ苦しまずに天国に導くことをお引き受けするのであって君が例え百万二百万持って来ても君の願いは受けられないよ 君は未だ本気でいじめと戦ってないような気がするんだ 死んでいいなら死ぬ気でいじめる奴らと戦えばいいじゃないか それが出来ないならスポーツクラブに入りなさい 野球部でもサッカー部でもラグビー部でも何でもいい 喉がかれる程大声を出しグランドを血を吐くぐらい走り回り地面に突っ伏して起き上がれない程の練習を仲間と一緒に受けてごらん そんな練習をクラブの連中は毎日受けて先輩から怒鳴られ時には蹴られても必死で耐えて心も身体も強くなっていくんだ 若しかしたら彼等も一人じゃその練習に耐えられないかもしれない 我慢出来るのは同じ苦しみに耐えてる仲間がいるからかも知れないね そんな仲間が出来れば君の悩みは解決できると私は見た やってご覧 クラブの猛練習と君が今受けてるいじめとどちらが厳しいか比較してご覧 それでも今の気持ちが変わらないならもう一度ここにきなさい 私が特別にノコギリで君の首をギコギコやってあげようじゃないか 死なない程度に ハッ ハッ ハッ どうした その顔は足がシビレたな遠慮しないで足を伸ばしなさい
★アジジジジ〜〜 アジ〜〜 
◎ハハハ その足を叩いてあげよう それっ『ぴしゃん』
★ギヤ〜〜 やめて下さい ギヤ〜〜

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●お客様はお帰りかい
◎参った参った 初めてのお客が中学生とは予想もしてなかったな〜
●悩むのは大人だけじゃないさ 物心付けば悩みも付いてくる 人間の性というか宿命だな
◎そうですね だから住職も時々キャバクラで煩悩をリフレッシュしてるんですね
●そうじゃない 出向のだらしない見習い坊主をどうやって更生させるか悩んでのストレス解消のために通っているんだよ
◎それって 若しかして 私のことで
●当り前だ お前しか見習い坊主はいないじゃないか
◎は〜〜 そのだらしない見習い坊主からしょちゅう意見される住職ってどんなもんでしょうかね〜
●うるさい この糞坊主が〜〜

                          おわり