白髪の王子様の好奇心 108 秘話

秘話
内緒話しとか秘話と聞くと興味津々となるのは誰しも同じだと思います。
『秘書課のマドンナの極秘情報を入手したけど、お前知ってるか?』
『美人は何かと噂されるけど今度はどんな情報なんだよ』
『大きな声じゃ言えないけどさ、彼女の右のお尻にホクロが二つ仲良く横に並んでるそうだ』
我々が身近で入手する秘話なんてせいぜいこんなもんであります。
東京スカイツリーが5月22日で開業3周年を迎えました。3年間の来場者数は1760万人を超えたそうです。誉めれば豚でも木に登ると言われますが、ずいぶんと昇ったものであります。
このスカイツリーを建設するために現場で陣頭指揮を取った副所長の秘話が2年程前の雑誌に掲載されていましたのでこの機会にピックアップしてみました。
スカイツリーの高さは御存知の通り634メートル。使用された鉄骨の重さは3万6千トン。足元は正三角形ですが上に伸びるにつれて円へと滑らかに変化する世界に類のない珍しい建築だそうです。
東京タワーでも333メートルです。地上500メートル、600メートルでの作業環境はどうなるのか誰にも分かりません。地上では傘もいらない小雨でも500メートル上空では前も見えない程の吹雪なんてこともよく有るそうです。そこで現場に本格的な気象観測機器を設置しました。そのデーターを見ながら気象の変化を予測して高所で作業する現場監督に知らせます。現場監督は工事の指示だけでなく安全の指示も重要な仕事です。地上と密に連絡をとりあい、一時待機、避難、工事中止等の判断と指示を的確に行って事故を未然に防ぐ訓練を平時から逐次行っていたそうです。
工事中に雷も数回落ちたそうです。鉄骨の上で作業する職人さん達は当然パニックになりますよね。
これも事前に専門家を呼び、裸で鉄骨にしがみ付いていても感電することはないことと、その理由をしっかり職人さんに教育してから作業にあたらせたそうです。
高所作業になると多くの職人さんが朝上に昇ったっきり夜まで下りられなくなります。そんな時の休憩場所、怪我の対応、薬、トイレ、食事、ゴミの問題等あらゆる状況を事前に想定して、その準備を怠りなく行ったことが秘話の主な内容でした。
現場は生き物です。いつ何が起こるか分かりません。そんな緊張とストレスで寿命が縮まる思いをするのが現場責任者の宿命であります。そんな副所長の対談最後の言葉が又泣かせるではありませんか。
『完成後スカイツリーには行ってませんよ、次がありますから』
苦難な仕事を当たり前のようにやり遂げる。それこそどんな秘話より感動すべき秘話のようです。
ところで鉄骨に雷が落ちた時、裸で鉄骨にしがみ付いていても感電しないって本当でしょうか?初耳です。大丈夫だと言った先生は実際に雷が落ちそうに成った時裸で鉄骨にしがみついて見せたのでしょうか、そんな時本当に雷が落ちて髪の毛はチリチリ、黒焦げの顔で『ほら大丈夫だろ』と言われても誰も信じませんよね。
裸といえば、マドンナのお尻にホクロが二つ並んでいるのをいったい誰が確認したのでしょうか。ホクロそのものよりそっちの方が問題ですよね。どうやら遠くの秘話よりも身近な秘話の方が胸をわくわくさせるようであります。


私の好きな、もう一つの散歩道の風景です。