白髪の王子様の好奇心 104 燃え尽きるまで

燃え尽きるまで
4月も終わろうとしていたここ10日間でスポーツ界の気になる記事が連続して紙面の片隅に掲載されました。これらのニュースは小さな記事ですがそれぞれ何かの糸で結ばれているような気がしてならないのです。
その一つ目のニュースは『カズまた更新』の記事です。一般紙なのでうっかりしたら見逃してしまいそうな小さな記事ですが、カズが片膝付いてガッツポーズしている写真も掲載されています。御存知のように最年長得点の更新です。48歳1か月24日での達成です。私はこの記事を切り抜きファイルしました。カズには失礼ですが、この得点が現役最後になるのではという胸騒ぎからです。
二つ目は『澤リーグ150得点』の記事です。カズの記録の一週間後に同じ紙面の同じ場所に同じ位の小さな記事で紹介されていました。こちらも澤のジャンピングボレーシュートを決めた小さな写真が掲載されています。世界のサッカーファンにその名を轟かせたサッカー界の宝である二人は今ではレギュラー獲得も保障されない崖っぷちで戦っています。そんな心配をしていた私の横にはワールドカップカナダ大会のメンバーに選ばれた澤選手の笑顔が掲載された朝刊が置かれています。このブログもリアルタイムで報道できるアクティブなブログに成長してまいりました。
三つ目は同じ日の『イチロー日米1968得点』の記事です。米ダイリーグ、マーリンズイチローが王選手の得点記録を超えました。そんな華やかに見えるイチローも先発メンバーから外されることも多くなり、レギュラー獲得のため必死でプレーをしています。インタビューでは可愛くない発言の多いイチローですが年齢のことに触れた外国メヂアに対して『バットが杖に見えないよう頑張ります』と素晴らしいジョークで返答したそうで、まだまだ気力も体力も口も達者なようで安心しました。
四つ目も同じ4月27日の『錦織日本人最多のツアー9勝』の記事です。私が注目したのは錦織選手の優勝ではなく、日本人最多の記事に隠れているクルム伊達の存在です。錦織選手は世界ランク4位5位と高位置をキープして大活躍していますが、今から20年前、結婚する前の伊達公子は既に世界ランク4位となっていました。男女の差はあるにしてもようやく伊達選手の一つの記録であるツアー8勝の記録を破ることができたのです。それが記事の見出しとなる程伊達選手はテニス界にとって偉大な存在なのです。一旦は引退しましたが、彼女の後を継ぐような有望な若手が一向に育ってこないことから、『若い選手に刺激を与えるため』と公言して復帰したのです。その間12年もブランクが有ったのに復帰の翌年にはバーミング大会で優勝、38歳と11ヶ月での快挙でした。そんなクルム伊達も今年44歳、怪我や疲労の蓄積で引退の危機に晒されています。
五つ目は『福原2回戦で敗退』の記事です。世界ランク8位の福原がランク63位の格下の選手に敗れました。誰もが(そろそろ)と不安な思いを抱く出来事であります。
日本の卓球界にとっては天才少女福原愛の誕生は女神さまのように思えたことでしょう。ネクラなスポーツとして若者からそっぽを向かれていた卓球を一躍憧れのスポーツとして注目を浴びる晴れの舞台に押し上げてくれたのです。早くも小学生の時にはプロ選手となり数々の記録を残してきた愛ちゃんも26歳、14歳15歳の選手が3回戦に勝ち進むなかでの敗退は勝気な彼女にとってどれ程悔しいことか計り知れません。愛ちゃんがまだ4歳の頃テレビ出演し、芸能人と対戦して負ける度に悔し涙を流しながら戦った姿が懐かしく思いだされます。
僅か10日間ぐらいの中で目にとまったこれらの5件の記事ですがそれぞれが何か見えない糸で繋がっているように見えたのは気のせいでしょうか。この5人の他にも水泳の北島選手、スキージャンプの葛西選手、フィギアスケートの浅田真央選手等々日本の宝であるアスリート達の多くが引退の文字を自分の辞書から追い出すように歯を食い縛って戦っています。こんな素晴らしい選手の活躍が見られる私達はとても恵まれていると言えます。見栄や飾られたプライド等には目もくれず一つの事に燃え尽きるまで挑戦する姿はなんと美しい事でしょう。そして忘れてはならないもう一人の有名人に白髪の王子様がおります。彼もまた健康寿命の崖っぷちに立たされ、同じく歯を食い縛って孤軍奮闘しております。彼も見えない糸で世界のアスリートたちと結ばれているのでありましょう。???


春の空はミルクを混ぜたような薄い水色が特徴です。朝6時前の澄んだ青空に向かって松の新芽が競って背伸びをしています。