白髪の王子様の好奇心 62 コーヒールンバ

コーヒールンバ
『♪〜♪ 昔アラブの偉いお坊さんが 恋を忘れた哀れな男に
 しびれるような 香りいっぱいの こはく色した飲物を教えてあげました
 やがて心うきうき とても不思議 このムード
 たちまち男は若い娘に恋をした ♪〜♪』
この歌を聴くまでは、お酒以外に心を酔わせる飲物がこの世に有るとは知りませんでした。
そんなコーヒーを砂糖も入れずミルクも入れずにブラックで飲むようになったのは30代も後半になってからです。コーヒーの味を楽しめるようになったのもその頃からであります。
その時には既に結婚をしていたし子供もいたので残念ながら心うきうきと恋に溺れることはありませんでした。
やっぱり私にとっては今でもほろ酔い気分にさせてくれるお酒が一番、コーヒーは二番、味噌汁が三番といったところでしょうか。
今宵は一番を飲みながら二番の話をしたいと思います。
話しはコーヒールンバの歌に戻ります。
アラブの偉いお坊さんから教わったコーヒーを飲んだ男は、コンガ、マラカス、ルンバ等の中南米の曲で踊ります。この男は若しかしたらキューバ人かも知れません。ブラジル人だったらサンバを踊る筈ですから。
さらに歌が進むと『モカマタリ』が出てきます。コーヒーの発祥の地としてエチオピアと争うイエメンのコーヒーがモカマタリですから、恋に破れた男は中南米からやって来てアラブ諸国を転々としたんですね、そうとう大きな失恋だったのでしょう、お悔やみ申し上げます。
コーヒーはトルコからベネチアを介して広くヨーロッパに伝わったようで1600年代にはコーヒーハウス(喫茶店)が繁盛したそうです。日本が鎖国をしてなければ徳川家康もこのコーヒーの味を楽しむことが出来たことでしょう。
ところがこのコーヒーハウスも当初はキリスト教からもイスラム教からも迫害を受けたそうです。
理由は、いかがわしい者が集まって、いかがわしい密談をしているとの容疑によってであります。
これを聞くと高校時代に『喫茶店に出入りをしてはならない』ときつく言われたことを思い出します。
学校は15世紀のヨーロッパの思想をいまだに引きずっているのでしょうか。
ある先生はコーヒーを飲むと背が伸びないとまで脅しをかけていました。そんな先生を見て私達は『先生はきっと小学生の時にコーヒーを飲んだに違いない』とささやいたものです。
話しをまたコーヒールンバの歌に戻します。
コーヒーを飲んだ中南米出身の男はルンバを踊りましたが、もし恋を忘れた男が日本人だったらはたして心うきうきと盆踊りを踊ったでしょうか?
『♪ 月が〜出た出〜た 月が〜出た〜ヨイヨイ ♪』
コーヒーにはちょっと合わないようです。