白髪の王子様の好奇心 50 お酒の神様はお酒がお嫌い?

お酒の神様はお酒が嫌い?
お酒を飲み始めてから約50年、飲んだうえでの失敗を山ほど築いてきたのに、まだ懲りないで飲んでいる。たぶん私の血液の三分の一はアルコールではないかと思っている。
こうした長年の功績が評価されたのか、最近ではお酒の神様と会話が出来るようになった。
『神様 お陰様で私は元気に古稀を迎えることが出来ました。まずは祝いの一献受けていただけませんでしょうか?』
『さようか それでは遠慮なく頂くとしよう』
『有難うございます。お酒は百薬の長ですね、私の元気の源です』
『薬となるのは、このおちょこ一杯位までだな、それ以上は薬とはならん』
『そんな〜・・・これっぽっちじゃ(なめくじ)だって満足しませんよ』
『勝手にしろ、吾輩は長生きの神様じゃない、それに吾輩は酒が嫌いじゃ、見るのもうとましい、お前が楽しく飲むんだったら飲みたいだけ飲めばよい、お前とは腐れ縁じゃから死ぬまで付き合ってやろう』
『有難うございます。そこまで付き合ってくださるのは大変嬉しいのですが、出来ましたらもう少し愛想良くして頂けるとこの場が盛り上がるのですが・・・』
『お前は吾輩を芸者とでも思ってか』
『いえいえ、そんな仏頂面した芸者なんかいませんよ』
『昔の芸者は芸事のスペシャリストとしての威厳を持っていたものだ。特に大夫と呼ばれた芸者は正五位という格式が与えられ、並みの武士では許されない禁裏にも上がることが出来た程じゃ』
『へ〜〜〜』
『大名や裕福な旦那衆はそんな大夫を招いて超一流の舞いや歌や三味線等を鑑賞することを極上の喜びとしたものだ。そんな大夫は横に座ってもニコリともしない、それが本物の芸者だ』
『はあ・・・』
『気のない返事をするな、お前はオッパイを半分出してミニスカートをはいてゲラゲラ笑う女が好みであろう』
『はあ どちらかと言えば偉そうに座っていられるより、そちらの方が・・・・』
『お前は未だ吾輩の話相手となるには修行が足りないようだな』
『いえいえ これからも尚一層精進して飲みますので、どうか機嫌を直して、もう一献受けて頂けませんでしょうか?』
『さようか それでは、これで』
『神様 それはおちょこじゃなくてドンブリですが』
『さようじゃ お前の身体を心配しての慈悲じゃ、けちけちしないで早く注がんか』
『はあ、それでは(トクッ トクッ トクッ)これで3合トックリが空になりましたが』
『さようか、それでは(ウイッ ウイッ ウイッ ウイッ・・・・ふ〜〜〜〜』
『神様 良い飲みっぷりですが、確か先程、酒は嫌いだ見るのもうとましいとおっしゃっていた筈ですが?』
『さようじゃ そちも悪よのう 吾輩を酔わせてどうする気じゃ』
『いえいえ、どうする気もありませんが、私も年金生活なのでこれから先は割り勘でお願いしたいのですが』
『・・・・・』
『あの〜神様聞こえましたでしょうか? これから先は割り勘で・・・』
『・・・・・』
『ちょっと神様、急に耳が聞こえなくなったんですか?・・・おぬしも悪よの〜〜〜』