白髪の王子様の好奇心 40 メガネと隠れんぼ

メガネと隠れんぼ
私はしょっちゅうメガネと隠れんぼをしている。
鬼は何時も私である。
この隠れんぼは妻には内緒で、私とメガネの二人っきりで静かに行われる。
うっかり妻に見つかったら鬼が増えてしまい私まで隠れなければならなく成るからです。
『もういいかい?』 小さな声で問い掛けても返事が無い。敵も馬鹿ではない。考えてみたら、問い掛けている方が馬鹿なんですね。
メガネには足も羽も無い。それなのにどうして私のメガネは隙さえあれば隠れてしまうのであろうか?
きっと寂しがりやなのであろう。私にかまってもらいたい、遊んでもらい一心で無い足を動かし、無い羽を羽ばたいて隠れているに違いない、可愛いやつである。
5分前、10分前、15分前と自分のたどった人生を振り返りながらメガネと過ごした場所を確認する。記憶はどんどん昔にさかのぼっているのに時間はどんどん過ぎてゆく。この反比例をアインシュタインはどんな理論で答えてくれるのであろうか。
妻のいそうな場所に入る時は緊張する。なにげない足取りで、なにげない素振りでカーテンを引き、日が長く成ったな〜等とひとり言をいいながらテーブルの上を素早くチエックするのである。
目を悪くしたのは中学3年の頃である。一生懸命勉強して目を悪くしたのであれば自己責任とも言えるが、私は勉強しないのに目が悪くなったのである。これは自己責任ではなく、国の責任だと私は思っている。だからして国家公務員を呼んで一緒に探してほしいくらいである。
一度、おでこの前髪の上に隠れていたことがある。ここは見つかりそうでなかなか見つからない盲点であった。探し疲れたせいもあってか『ご主人様の頭に乗るとはけしからん』と叱ってやった。
祭りで神輿の上に足を掛けて威勢を誇示するやからがいるが、あれは祭りの意味も神輿の意味も知らない者による愚行である。
神輿の中には神社からお迎えした神様が鎮座しているのである。それに足を掛けるのである。その瞬間神様はもう神輿の中には居ない。そんな空箱に向かって手を合わせる人もいないのである。
メガネも反省したのかその後は頭に乗ることはなくなったが、いたずらは相変わらずである。
携帯で外出先からエヤコンや風呂のスイッチを入れられる時代である。メガネにICチップを組み込んでおいて携帯やスマホで位置確認ができないものであろうか・
できれば『お〜い』と呼んだら『は〜い、ここよ〜』と答えてくれたら最高である。