白髪の王子様の好奇心 16 神様 仏様 田中様

神様・ 仏様・ 田中様
シーズン24勝0敗の楽天田中が日本シリーズの第2戦に登板、毎回の12三振を奪い
対戦成績を1勝1敗とした。楽天にとっては正に『神様・仏様・田中様』である。
この言葉は御存じのように1958年、西鉄と巨人の日本シリーズで3連敗していた
西鉄は稲尾投手を4連投させて4連勝した時に『神様・仏様・稲尾様』という名文句
が生まれたのである。
この言葉は欧米諸国やイスラム教等の一神教の国では信じがたいことであろう。
日本の神様はとてもおおらかで心が広く、他国から伝わって来た仏教を邪教などと
遠ざけることなどせず、むしろ良い教えを融合調和して全国に広げてきたのである。
10月は神無月と言って全国の神様が出雲大社に出掛けて留守になるらしい。神様も
年に一度位はどんちゃん騒ぎでストレスを解消しないと欲深い人間と付き合っていら
れないであろう。神様が集まる島根県の出雲では10月を神在月とよんでいる。
この出雲大社の祭神、大国主命(おおくにぬしのみこと)は国土開拓の神様とも呼ばれ
中世以降から神仏習合の神社を全国に広めたそうである。その結果10月は全国から
万の神どころか八百万(やおよろず)の神々が大きな袋に地元のお土産を満杯に入れて
やって来るのである。何故なら出雲大社は大黒天と習合して発展してきたからである。
肩から下げた袋が神様の一年分の堪忍袋でないことを祈りたい。
神様、仏様と同列で拝まれた田中は複雑な気持ちであろう。次の試合でボコボコに打た
れたら何と言われるのだろうか?、口汚いフアンは野次るに違いない。プロの勝負の        世界は毎日が戦いである。昨日逆転ホームランを打って歓喜で迎えられても、今日の
試合でエラーをして負ければミソクソに罵声を浴びる厳しい世界である。
田中投手自信はきっと試合の度に何かに祈っているに違いない。若しかしたら単純な
げん担ぎかも知れない。勝負パンツは赤だとかグランドに出る時は左足から先に出す
とか。
どんなスポーツでもアスリートはげん担ぎが多い。それも他人がきいたら笑い転げる
ような滑稽なものが殆んどだから嬉しくなる
そんな勝負の世界で頼りたくなるのはやっぱり神様である。
どのチームも開幕前には全選手が揃って神社に詣でる。
2転3転する好ゲームになると必ずアナウンサーが絶叫する。『さて、この試合は
いったいどちらに勝利の女神が訪れるのでしょうか?』
若しこれを『さて、この試合はいったいどちらに仏様が訪れるのでしょうか?』等と
絶叫したらどうだろう。お客様は足元を見つめて手を合わせたくなるに違いない。
仏様はおっしゃるであろう『目の前の事に一喜一憂して冷静さを失ってはいけません』
だからこそ神仏の融合と調和は日本人に豊かな心をはぐくんできたのである。
リビングから日本シリーズ第4戦の中継が聞こえてきた。
さてさて今日はどちらのチームに女神は微笑むのだろうか?。