白髪の王子様の好奇心 5 逆さま美人

逆さま美人
『美人屁もすりゃ糞もする』
よく男が使う言葉である。これは顔だけでは人間の価値は判断できないし皆同等だという
意味を含んでいると思われるが冷静に考えればブスも同じように屁もすりゃ糞もするから
それなら美人の方が良いに決まっている。
そんな美人像も今と昔ではちゃぶ台をひっくり返したようにまるで逆さまである。
女の命とまで言われた長い黒髪はプッツリ切られ、そればかりか外人のように茶色に染め
たりチリチリに焦がしたりして髪をいじめて喜んでいる。
更に美人の絶対条件であった白い肌をわざわざ日焼けサロンとやらでトーストのように焼
くとは小野小町が見たら卒倒すに違いない。
これは美人薄命と言われた弱弱しいイメージから夏目雅子やアグネス・ラムのような健康
美が脚光を浴びてからビックバーンの如くはじけた感がある。
目は一重で切れ長が良しとされたが今では一重目蓋をわざわざ二重にして誰もがビックリ
したようなドングリ眼になってきている。
胸の大きな女は頭が悪いという迷信も手伝ってかさらしを巻いてまで胸を小さく見せてい
たのが今や超ボインや超超ボインが雑誌の表紙を飾っている。デカパイ、巨乳、爆乳など
と下品な表現が飛び交っているが私は明るくユーモアにあふれたボインが大好きである。
そこでまさかと思いつつも広辞苑でボインを検索したところ『女性の乳房が豊かなさまを
いう』とちゃんと載っているではないか、バンザ〜イである。
こうした女性の美への挑戦は男の期待とは裏腹に今も昔も男から好かれるためではなくて
同性との戦いのような気がする。
化粧もダイエットもファッションも女同士の熾烈な戦いなのである。車中で化粧に夢中な
女性を見てもあれは戦場に向かうための儀式と思えば多少は腹の虫も治まるというもので
ある。できれば化粧が終わり戦いの準備ができたら立ち上がって長い槍を持ってピョンピョ
ンと飛び上がってくれれば激励の拍手でも送るのだけれども。