白髪の王子様の好奇心 4 自販機からのエール

自販機からのエール
10年程前、営業活動にて渇いた喉を潤すために道端の自販機を利用することにした。
『ガタン』と缶コーヒーが落ちる音がしたのでいつものようにしゃがんで取ろうとした時
『有難うございました 午後も頑張りましょう』と爽やかな声が響いてきたのである。
これには思わず笑ってしまったが単純な性格なのだろうかその日の午後はいつもより気分
良く仕事が出来たことを覚えている。
最近銀行のATMはどこも美人の女性が画面に現れてやさしい声で応対してくれる。帰りに
窓口を覗いてもATMの女性程感じの良い行員はあまりお目に掛かれない。
何台も並んでいるATMのうち1台位はちょっとメタボでちょっとおブスさんが画面に出て
来て『いらっしゃいませませ〜』とやったら受けると思うがどうであろうか?
駅前のコインロッカーに向かって『宜しくお願いします』と頭を下げるおばさんは今でも
見かけるそうだ、それ程機械の音声は人間の声に近付いてきたのである。
民家の庭にも自販機が進出して久しいがこうしたドリンクの自販機を追い越さんばかりに
コインランドリー・セルフのガソリンスタンド・コイン駐車場・洗車場・電池・食券・
入場券からおみくじ等々街は無人機で溢れんばかりである。
人よりも機械との会話が多くなるSFのような生活が一人暮らしの人にはもう訪れているよ
うである。