白髪の王子様の好奇心 30 春うらら

春うらら
春の3月と成りましたがまだ残る大雪の残骸を撫でる風はけっこう冷たい。
電車の中に傘を忘れて『春雨じゃ 濡れて参ろう』などと気取ってみたのは
いいけれど風邪をひくのも今頃の雨である。
風邪なのに花粉症ですかと聞かれたり、花粉症なのに風邪ですかと聞かれる
ややこしい春でもある。去年も書いたかも知れないが聞く方も聞かれる方も
疲れるので、できればマスクに花粉とか風邪とかどろぼうと書いてほしい。

陽がいつの間にか伸びているのに気が付くのも今頃である。
夕方の4時過ぎには暗くなっていたのに今では6時に成っても西の空の片隅
に青空が残っていて嬉しくなる。
カレンダーをめくりながら『あ〜あ 今年もあと10ヶ月で終わりだわ』と
妻が溜息をついている。そんなこと言ったらあと22ヶ月たったら来年も終
わりである。
春という字は暖かい日を浴びて草が生える時期を表わしているそうですが、
この字を見るだけでもウキウキした気分に成るから不思議である。
そろそろ春定番の懐かしい曲がラジオから流れてくる頃である。
平成生まれの人にとってはおとぎ話に出てくる歌に聞こえるかも知れないが
我々の年代ではニューミュージックなのであり、歌詞もリズムも分かり易く
思わず曲に合わせて口ずさんでしまう。時には踊りだしたくなるのである。
ただ、気が狂ったと思われるから我慢しているにすぎない。

春を色で表せばピンクであろう。
恋をしている人にとっては紅梅のごとく鮮やかなピンクであり、片思いなら
ほんのり淡い桜色のピンクかも知れない。
『♪ 雨が小粒の真珠なら 恋はピンクのバラの花 ♪』という歌もあった。
このように様々なピンクが有るが雨も真珠に思えるようなバラ色の恋をして
みたいもんですね。
今日の天気予報は一日雨である。
『傘は雨の滑り台だね』こんな素晴らしい子供の詩をラジオで聞いたのは
30年か40年も前である。子供の純真な心に感動したのか今も時々思い出す。
我々飲んベイが『雨が酒であったなら』とうらやむ邪心とはえらい違いである。
今日の雨を真珠と見るか、傘を滑り台にして楽しんでいると見るか、はたまた
氷雨と感じるかはどうやら私達の心次第のようである。
同じ春の雨なのに。