白髪の王子様の見聞録 ほっこりアイランド

29 地鎮祭

(プー) 王子様 地鎮祭おめでとうございます

★ありがとう プーちゃんと会うのは久し振りだね

(プー) その節は古タイヤを引きずったまま浜辺を走らせたりターザンの真似をさせて川に落ちたりと色々失礼しました

★はいはい 老骨にムチどころかボクシングジムでサンドバックの代わりに鎖で吊るされてボコボコにされた感じでした

(プー) それはお気の毒でした

★気の毒どころか毒キノコでしたよ

(プー) 意味不明なので話を先に進めます これは先生から預かった地鎮祭に必要なお供え物です ご確認下さい

  これは海の幸の鯛です

  これは山の幸の果物

  これは野の幸のお野菜

  それに塩一合とお水一合

別の袋にはお酒が入っています これで全部です

★先生というかご主人殿には何から何までお世話になります 確かに受け取りました 飛び上がって喜んでたとお伝えください

(プー) 嘘は伝えられません

★それでは飛び上がらずに泣いて喜んでいたとお伝えください

(プー) 嘘は伝えられません

★あのねプーちゃん 人間社会では喜びの気持ちをオーバーに表現するのが礼儀なんだよ 特に親しい人にはね 

(プー) そうですか それではそれなりに喜んでいたと報告します

★可愛い顔して言うことはクールだな ロボットには言葉遣いにも お・も・て・な・し・の心遣いがあることは理解できないだろうな

(プー) 王子様 神主さんがいらっしゃいましたよ

(神主) どうも どうも 白髪の王子様でいらっしゃいますか 宮殿をこしらえるそうでおめでとうございます 私はほっこり神社の神主で小柳と申します

★御足労をわずらわせまして 地鎮祭の神事よろしくお願いいたします

(神主) 大工の棟梁の方はお見えでしょうか

★それが未だでして心配しているところです

(マ) 何いってるんですか王子殿 棟梁は私ですよ 2時間も前からここに居るじゃありませんか

★えっ? 貴方はマッチョマンゾーンのリーダーじゃないですか

(マ) 私は建築会社のラグビー部のキャプテンですが建築士の資格を持つ棟梁でもあるんです 現在ほっこりアイランドだけでも改修工事を含めて5か所の現場を管理してます ねえ神主さん

(神主) おや田鍋さんでしたか ネクタイなんか締めてすましていたので王子様の身内の方だと思ってましたよ ハッハッハッ 我が神社の改修工事を抜け出してこちらの新築工事を担当するんですか

(マ) 小柳さんの神社の改修工事には社寺専門のベテランの大工が常駐してますからご安心下さい ところで地鎮祭は建築主と大工の棟梁と神主さんとで行う簡素な神事なのに巫女さんを3人も引き連れてどうなさったんですか

(神主) 彼女達は見習い中の巫女でして勉強のために連れてまいりました 『さあさあみんな建築主の白髪の王子様と棟梁の田鍋さんにご挨拶をしなさい

(巫女) 初めまして 見習い中のお岩と申します

    同じくお菊と申します

    同じくお露と申します

★ちょっとちょっと あなた達は幽霊ゾーンで会った四谷怪談のお岩さんと番町皿屋敷のお菊さんと牡丹灯篭のお露さんじゃないですか

(お岩) あら 貴方が白髪の王子様でしたの よくご無事で

★冗談じゃないですよ あなた達のお蔭で私はがん箱に片足を突っ込みもう一方の足を天国のお花畑に突っ込んだんですから

(お菊) まあ 長い足ですこと それにしても天国のお花畑を見たなんて羨ましいわ 私たちはずーと冥土の暗闇で暮らしていたのに

(お露) そうよ それに私達は300年もの間ずーっと『うらめしや~~』と手首をだらりと垂らしていたので最近手首が回らなくなってお尻を拭くのにも苦労することから幽霊から足を洗うことに決めたんです

★そんな理由で幽霊を止めたのかね 信じられないな~ 兎に角地鎮祭では呪いを掛けないでくれたまえ  

(神主) ハハハハ 王子殿 この者たちを救えるのは神職である私にしか出来ません 私がみそぎを済ませ悪霊も取り払いましたのでどうぞご安心下さい二度と人を恨んだり呪ったりすることはありませんので

★そう願います

(珍) やあ白髪の王子殿 地鎮祭おめでとうございます 間に合ったようで安心しました

★おや 珍客のもぐら博士じゃないですか もうとっくにこの島から離れたと思ってましたが

(珍) 今はほっこりアイランドの『セクシーゾーン』の入江にテントを張って相変わらず岩を転がしたり土をほじくり返しております

★それが何でここに?

(珍) 台風15号が近づいていた時避難所で貴殿のお弁当を留守中にたいらげてしまったお詫びに今日は一升瓶を抱えてお祝いにやって来たという訳でしてハハハハ

★それはそれは恐れ入ります ところでほっこりアイランドにセクシーゾーンなんてそんな素晴らしいところが有ったんですか 

おいブー太郎 何で私にそのセクシーゾーンとやらに案内しなかったんだね

(ブ) だって この島が気に入ったからもう先に進まなくても良いと言ったのは王子様じゃないですか

★セクシーゾーンは別格だよ そこんところの空気を読めよ 空気を

(ブ) 空気は吸うもので読むものではありません

(珍) ハハハハ 王子殿これからは何時だって行けるじゃないですか 私が案内しますよ

(神主) あの~ そろそろ地鎮祭を執り行いたいのですが・・・

★あっ! すみません ついセクシーゾーンに気を取られまして どうぞよろしくお願いします ところで神主殿 この神事が終わりましたら一緒にセクシーゾーンに行きませんか 人生は一度です楽しむのは今ですよ

(神主) ・・・・

(ブ) あっ! 神主さんが無言で袖の下からVサインを送ってる 神主さんまであの調子じゃ日本の神様もアダムとイブと一緒にりんごをかじったに違いない きっとそうだ 絶対そうに決まってる ガ~~~ン

つづく