白髪の王子様の会話ドラマ 時空神社シリーズ 谷風と雷電 ②勧進相撲

勧進相撲
(谷風)・今帰ったよ
(雷電)・お帰りなさい
(王子)・お帰りなさいませ谷風さん
(谷風)・おやっ 客人かね
(雷電)・はい 半時ほど前にこの客人が『お〜〜い谷風は居るか〜〜隠れてないでさっさと出て来やがれこのすっとこ野郎が〜』と大声で叫びながら格子戸を蹴飛ばすもんですから中に入れて問いただしていたところです
(谷風)・何だと〜 この野郎
(王子)・ちょっとちょっと雷電さん 谷風さんが本気にしてるじゃないですか嘘はいけませんよ嘘は
(谷風)・何をごちゃごちゃ言っておる いったいお主は何処の誰だね
(王子)・申し遅れました 私は白髪の王子と申しまして時空神社から谷風さんにお渡しするようにとお預かりした文をお届けに伺ったものです
(谷風)・そうか それにしても格子戸を蹴飛ばすとは尋常ではないが逮捕状でも持ってきたのかね
(王子)・いえいえ格子戸を蹴飛ばすなんてとんでもありません それは雷電さんの冗談ですよ だいたいこの家には格子戸なんて無いじゃありませんか
(谷風)・お〜う 確かに・・ハッハッハッ 私も雷電の戯言にまんまと引っ掛かったというわけかハッハッハッ しからば早速その文とやらを渡して頂こう
(王子)・こちらで御座います
(谷風)・おう 祭主様からではないか 何と達筆なことよ どれどれ・・・おい雷電 横からあからさまに覗く奴があるか
(雷電)・だって時空神社の祭主様といったら美人で誉れ高いあの小野小町様じゃないですか 若しかしたら恋文ではないかと思いまして
(谷風)・恋文だったらなおの事覗くのは失礼であろう なあ王子殿
(王子)・小野小町様は貴人ですからふんどし姿でお尻丸出しの男には何の興味もないと思われますからそのような甘い考えは無用と思います
(雷電)・お主は澄ました顔して人を崖から突き落とすようなことを言うではないか お主は知らんだろうが谷風さんのお尻はそんじょそこらのお尻とわけが違うんだぞ ピンク色で艶があってプッチンプリプリの美尻で弁天様もホノ字になったというギネス入り確実の尻なんだぞ
(谷風)・おい雷電何をくだらんこと言っておる 祭主さまからの文は勧進相撲の式典についての知らせだ
(雷電)・えっ? 時空神社で勧進相撲が行われるんですか 
(谷風)・あゝ 新年早々増改築を行うにあたり地鎮祭での四股と取組の依頼だ さ〜て忙しくなるぞ
(雷電)・いいですね〜谷風さんと小野川さんの両横綱が招待されるんですね
(谷風)・違うよ お前と私が横綱を締めて四股を踏むんだ お前は上覧試合で小野川関を投げ飛ばしたではないか 結果は藩の預かりとなっているが誰もがお前の勝を認めているし時空神社の祭主もその点を考慮して私とお前を選んだのであろう
(王子)・ちょっと待って下さい 若しかしたら谷風さんと雷電さんの取り組みも見られるんですか?
(谷風)・当然勧進相撲の結びはこの私と雷電が対戦することになると思うが・・・おい雷電 この話は行司の木村庄之助さんのところにも行ってる筈だ ちょっと確認したい事があるから連絡をとってくれないか
(雷電)・はい分かりました ちょっと王子殿 お主の携帯を貸してくれないか
(王子)・えっ? 私の携帯で繋がるんですか
(雷電)・あたり前田のクラッカーよ 地上で使える者は全て天国でも使えるのさ 
(王子)・まあいいですけど雷電さんは携帯を持ってないんですか
(雷電)・持ってるよ だけど天国の通話料金が高くてさ だからお主に頼んでるんじゃないか ケチケチしないで早く貸してくれよ
(王子)・どっちがケチなんですか 全く〜 はいどうぞ
(雷電)・何だよ これガラケーじゃないか 遅れてるな〜 ダイヤル回すんじゃないだろうな 
(王子)・番号のボッチを押せばいいんですよ 文句が有るなら返して下さいよ
(雷電)・文句は無いけどさ 指を横に滑らす癖がついてるから使いづらいというだけのことさ
あっ!木村庄之助さんですか 私雷電ですがご無沙汰しております 今谷風さんのところにお邪魔してるんですがたった今時空神社から勧進相撲の知らせが届きまして其の件につきまして木村さんに確認の電話をした次第です あ はい そうですかやっぱり あ はい そうですか わざわざすみません ではお待ちしております あ はい 勿論谷風もお聞きしたいことがあるそうで喜ぶと思います それではお待ちしております はい はい 失礼します
(谷風)・おい雷電 お待ちしておりますって お前は木村庄之助さんを呼び付けたのか
(雷電)・とんでもありません 木村庄之助さんにも今朝方時空神社から勧進相撲挙行の連絡が入り地鎮祭での四股や勧進相撲の土俵入り等の習わしについて我々二人に話したいことがあるそうです 私が谷風さん宅にいるなら話が早く済むので丁度いいからそちらに今すぐ向かいたいと木村さんからそう言われたんです
(谷風)・そうか これこそ以心伝心だな 私も時空神社の祭事について失礼のないよう確認したいことがあったんだ おい雷電 薩摩の焼酎が納戸の隅に置いてあるから持って来てくれないか 木村さんは薩摩の焼酎がことのほか好きでな
(雷電)・実はその焼酎はここに居る客人が飲んでしまいまして もう空であります
(王子)・ちょっとちょっと雷電さん 私は焼酎なんか一滴も飲んでいませんよ だいたいお茶の一杯も御馳走してくれなかったじゃないですか
(谷風)おい雷電 その戯言には私でも引っ掛からないぞ 白状しろよ
(雷電)・すみません 留守番のお駄賃として少々
(谷風)・全く あきれた奴だなお前は
(木村)・ピンポ〜〜ン ピンポ〜ン 木村です お邪魔してよろしいですか〜
(谷風)・これはこれは木村さん わざわざお越しいただきまして申し訳有りません それに我が家にはチャイムは無いのにピンポ〜ンと鳴らして頂きまして有難うございます
(木村)・今時戸をドンドン叩く時代でもなかろうに 谷風さん 入口にチャイムぐらい付けたらどうですか
(谷風)・恐れ入ります 設置しようと思った時に限って雷電が訪れまして家にある食べ物から飲物までみんな平らげてしまうもんですから中々チャイムまで資金の工面がつきませんでして・・・
(雷電)・ちょっと谷風さん それはひどい言い訳じゃないですか
(木村)・ハハハハ ところでこちらの方はどなたで
(谷風)・あれっ 君はまだ居たのかね もう帰っていいよ王子殿
(王子)・とんでもありません 私がここに来た本来の目的は谷風さんへのインタビューですからこれからが本番です 祭主様からの文の最後に私のことも書かれていた筈ですが
(谷風)・そうだったかの〜う
(木村)・いいではないですか谷風さん 師走から正月にかけてはお祭りの様なもので大勢の人が居た方のが楽しいものです これは土産物でたいしたもんではないが皆で楽しく飲んだり食ったりしながら勧進相撲の打ち合わせでもしましょうや
(王子)・有難うございます 早速ですが谷風さんにお聞きしたいのですが勧進相撲は本来は今回のように神社仏閣の新築や増改築の資金集めに行われてきたと聞きますが それとは関係なしに年に二回定期的に開催されるようになっても勧進相撲と呼ばれてきたのは何故ですか
(谷風)・それは木村庄之助さんのが詳しな 木村さんお願いします
(木村)・宮中行事の一つであった相撲は武士の台頭によって幕府に移り 江戸時代の中頃に寺社奉行の管轄となったんだよ 寺社奉行はその名のとおり神社仏閣を取り締まるだけでなく祭事の権限もあったことから勧進相撲の名はそのまま明治になるまで継続されたという訳だ
(王子)・成程 天覧相撲や上覧相撲も勧進相撲が行われている場所で行われたんですか
(木村)・まさか天皇や将軍を勧進相撲に連れて来るわけにはいかないさ 御所や城のなかに土俵を設けそこで古典的儀式を取り入れて厳かに行われたのだ その儀式が後に一般の勧進相撲にも取り入れられるようになったのさ
(雷電)・おいおい王子殿 木村さんがまだ着座もしてないうちから矢継ぎ早の質問は失礼じゃないか
(王子)・これは失礼しました でも雷電さんもまだお客様用の座布団を出してないじゃありませんか それじゃ木村さんも着座できませんよ
(雷電)・馬鹿も〜ん お主が今踏んづけてる座布団が木村様に用意した座布団だ〜〜
(王子)・ホエ〜〜〜〜〜〜ッ

つづく